2020年から流行している新型コロナウイルス感染症。
イベントや行事の主催者の方は、三密の回避やマスク着用、手指の消毒など感染対策を徹底しているかと思いますが、やはり気になるのは感染者が出てしまった時の補償についてではないでしょうか。
イベントや行事を行う際には、参加者のケガについて備えるレクリエーション保険がよく用いられますが、レクリエーション保険で新型コロナウイルスをはじめとした感染症にも備えられるのでしょうか?
この記事では、レクリエーション保険で感染症の対策はできるのかどうかを解説します。また、現在各保険会社が発表している新型コロナウイルス感染症に対する措置についても情報も紹介します。
レクリエーション保険では感染症は補償対象にならない
イベントや行事を開催する際、万が一参加者がケガをしてしまう場合に備えてレクリエーション保険に加入する方は多く見られます。
そんな中、昨今の新型コロナウイルス感染症の流行の影響で、ケガだけでなくイベントや行事が原因で感染した新型コロナウイルスに対しても備えを用意したいと考える方が増えています。
しかし、結論から言うと、残念ながらレクリエーション保険では新型コロナウイルス感染症は補償の対象にはなりません。
現在、新型コロナウイルス感染症の流行をうけて各保険会社が特別措置を発表し、いくつかの保険商品では新型コロナウイルスも補償対象となっていますが、レクリエーション保険は該当しません。
感染症が補償対象になるのは「特定感染症危険補償特約」などが付帯されている保険
そもそも、傷害保険において感染症が補償対象となるのは「特定感染症危険補償特約」など、感染症も補償する特約が付帯されている場合で、なおかつ罹患した感染症が特約で指定されている範囲内の感染症である場合です。
たとえば、エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、結核、SARS、コレラ、O-157を含む腸管出血性大腸菌感染症などが対象です。
傷害保険の1種であるレクリエーション保険には、特定感染症危険補償特約は付帯されていないことがほとんど。そのため、参加者が新型コロナウイルス感染症にかかってしまっても、補償対象となることは現在ありません。
感染症対策をするなら、個人で加入する医療保険・傷害保険を利用する
もし新型コロナウイルスに対して保険で備えたいという場合には、レクリエーション保険は使えないため、個人が加入する医療保険や傷害保険などで対応するしかありません。
現在、各保険会社で新型コロナウイルス感染症も補償の対象に含める「特別措置」を発表しています。その措置に含まれる保険商品などに加入すれば、個人単位ではありますが、新型コロナウイルスに対する対策をとることができます。
レクリエーション保険ではどんなケガ・症状が補償される?
では、レクリエーション保険ではどんな症状が補償の対象となるのでしょうか?
ここでは、レクリエーション保険の基本的な補償内容を解説します。
基本的にはイベント・行事中に発生したケガが補償対象
レクリエーション保険で補償されるのは、開催したイベントや行事の最中に発生した偶然の事故により参加者がケガを負い、万が一死亡してしまった場合や治療に入院・通院等が必要になった場合です。
- 死亡保険金
- 後遺障害保険金
- 通院保険金
- 入院保険金
- 手術保険金
イベント・行事の最中に偶然に発生した事故・アクシデントによるもので負ったケガ
- スポーツの最中に転んでしまい、腕を骨折して入院が必要になった
- 料理教室で指を深く切ってしまい、数日間通院が必要になった
- イベント会場に設置されたテントが強風で倒れ下敷きになり、足を骨折して入院が必要になった
なお、通院や入院が必要ないような軽度のケガに対しては、レクリエーション保険の保険金は支払われないので注意しましょう。
特約を付帯した場合、熱中症やウイルス性食中毒も補償対象に
レクリエーション保険で補償の対象となるのは、基本的には骨折や打撲、ねんざや切り傷などのケガです。
しかし、保険会社が用意している特約を付帯させることで、ケガだけでなく熱中症やウイルス性の食中毒による症状も補償の対象とすることができます。
ただし、保険会社によってはこういった特約がないこともある点に注意が必要です。
特約などの補償に関する諸条件は各社が用意しているレクリエーション保険のパンフレットや、保険の約款に記載されているので、契約前によく確認しましょう。
新型コロナなどの感染症にはどう備える?保険会社各社の対応とは
ここまで解説してきたとおり、残念ながらレクリエーション保険では新型コロナウイルス感染症は補償の対象にはなりません。
しかし、その他の傷害保険や医療保険などでは、新型コロナウイルスに罹患し入院などの治療が必要になった場合も補償の対象に含めるという措置をとっている場合があります。
ここでは、保険会社が新型コロナウイルス感染症に対してどのように対応しているのか、一例をご紹介します。
「特別措置」を発表し、新型コロナウイルス感染症を補償対象とする場合も
新型コロナウイルス感染症の流行により、保険会社のなかには「特別措置」により新型コロナウイルス感染症にかかった場合も補償対象とすることを発表しているところがあります。
例として、損保ジャパンの措置をご紹介します。
傷害を補償する保険 | 傷害総合保険、普通傷害保険、家族傷害保険、積立傷害保険、くらしの安心保険など | 特定感染症危険補償特約をセットしている全契約に、新特約「指定感染症追加補償特約(特定感染症用)」を追加保険料なしで自動セットし、所定の条件内で新型コロナウイルス感染症も補償対象とする。 |
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疾病を補償する保険 | 海外旅行保険、学校旅行総合保険など | 新特約「指定感染症追加補償特約」を追加保険料なしで自動セットし、所定の条件内で新型コロナウイルス感染症も補償対象とする。。 |
企業向け商品 | 賠償責任保険、事業活動総合保険、企業総合補償保険など | 特定感染症危険補償特約をセットしている契約に、新特約「新型コロナウイルス感染症に関する費用補償追加条項」を保険料なしで自動セット。新型コロナウイルス感染対策として保健所等の指示や命令に基づく消毒・隔離等の費用を支出した場合、またはその処置によって営業休止・阻害された場合、損失に対して所定の金額を補償する。 |
損保ジャパン 新型コロナウイルス感染症に関する商品・特別措置等のご案内
https://www.sompo-japan.co.jp/announce/2019/202002_01/
このように、損保ジャパンでは特別措置を講じることで新型コロナウイルス感染症に対する備えを用意しています。
損保ジャパンだけでなく、東京海上日動やあいおいニッセイ同和損保、AIG損保など多くの保険会社が特別措置の発表をしています。
残念ながら、レクリエーション保険では特別措置が適用されることはありませんが、ご自身が個人で加入している保険商品のうち、特別措置の対象になっているケースがあるかもしれないので、チェックしてみると良いでしょう。
主催者ができる対策は?
最後に、イベント主催者ができる感染症対策をご紹介します。
各個人が保険に加入し万が一のケースに備えることも大切ですが、イベントや行事の運営上もっとも重要なのは、主催者や参加者がそれぞれきちんと対策をとって開催することが最も重要です。
参照:3密を回避するための手引き
https://www.kantei.go.jp/jp/content/000062771.pdf
会話をする際には必ずマスクをつける
マスクの着用は日頃から徹底している方が多いかと思いますが、たとえば飲食時にも会話をするのであればその間はマスクを付けるなど、細やかな配慮が必要です。
または、なるべくみんながマスクを外す時間が長くならないよう、イベントの時間を午前のみ・午後のみなどにして、全体で飲食をする時間を含まないようにすることも一つの方法でしょう。
座席などはきちんと間隔を空ける
イベント開催中は、人と人との間隔が近くなりすぎないように必ず間を空けるようにしましょう。2m以上空けるのが理想的です。
会場に入る際の列や、施設内での座る座席なども間を空けられるように適宜指示をするなどの対応が必要です。
定期的に換気をする
施設内で空気の流れができるように、2方向の窓を開けて換気を行いましょう。
イベントや行事のなかで、一つの内容が終わるたびに換気をするなど、タイミングを決めて定期的に換気を行うことが重要です。
また、もし大きな声を出さないようなイベント・行事であれば、常に窓を開けておくのも良いでしょう。
多くの人が触れる部分はこまめに消毒する
会場の入り口で手指の消毒液を用意しているケースはよく見られますが、それだけでなく、ドアノブや共用で使う道具などは、定期的に消毒するようにしましょう。
消毒液のスプレーを一つ購入しておいて、一時間ごとなどにきちんと消毒してください。
まとめ:レクリエーション保険では感染症の対策はできない
今回は、レクリエーション保険で感染症に備えられるかどうかを解説しました。
ポイントをまとめると、以下の通りです。
- レクリエーション保険では新型コロナウイルスなどの感染症は補償対象にならない
- 新型コロナウイルスなどに備えるなら個人で適切な医療保険・傷害保険などに加入すること
- 現在、各保険会社では特別措置を発表し、既存の保険商品の一部で新型コロナウイルスも補償対象としている
レクリエーション保険では残念ながら新型コロナウイルス感染症に対する補償を得ることはできないため、イベント主催者ができるのはとにかくイベント中の感染防止対策を徹底することです。
政府が発表している3密の回避や、参加者のマスク着用、会場内や道具の消毒などをしっかり行うようにしましょう。