コンサートや運動会など、多くの人が集まるイベント開催時には、設備の不備や事故など予期せぬ事態で多額の治療費や修繕費の請求を受ける可能性があります。
そんな事態に備えられる保険が「イベント保険」です。
開催内容と規模に応じた保険料で、参加者のケガや施設破損、中止補償など幅広い補償が得られる保険となっています。
この記事では、イベント保険の価格や補償内容を詳しく紹介していきます。
イベントの開催に際して、イベント保険への加入をご検討中の方はぜひ参考にしてみてください。
そもそもイベント保険とは
イベント保険とは、不特定多数の人が集まる大規模なイベントの開催中に発生しうる事故やトラブルによる損害から、イベント責任者や主催者を守る保険です。
具体的には、イベントの中止や事故、参加者のケガ、使用機材の破損など、想定外の事態に対して主催者を守ります。
イベントの主体となる開催者や運営者、責任者が契約者となり、イベント中に生じた事故や損害に対する補償を得ることができます。
食中毒やレンタル品を対象とした特約も用意されており、イベントの内容に応じて必要な補償を組み合わせられるのが特徴です。
イベント保険は、イベントや行事の開催に際して大きな損害リスクを軽減できる保険と言えます。
イベント保険の種類と補償内容
イベント保険はいくつかの保険にから構成されており、保険の種類によって補償の対象や内容が異なります。
具体的には以下のような保険の種類があります。
イベント保険の種類 | 補償内容 |
---|---|
興行中止保険 | 悪天候や事故等でイベントが中止になった場合の損失を補償します |
損害賠償責任保険 | 会場の不備等で参加者に損害を与え、主催者が法的賠償責任を負った場合を補償します |
傷害保険 | イベントでの事故等による参加者の死亡・後遺障害や入院等を補償します |
動産総合保険 | イベントで使用する機材等の物的損害を補償します |
このほかにも食中毒補償、受託品賠償責任補償といった特約を組み合わせることができます。
イベントの内容に応じて必要な補償を選択するようにしましょう。
イベント保険の価格はどう決まる?
イベント保険の保険料は、開催するイベントの内容や規模に応じて個別に算出されます。
保険料を算出するための、主な要素は以下の通りです。
参加者数 | 参加者が多いほどリスクは高まるため、保険料は人数に応じて設定される |
---|---|
支払限度額 | 事故あたりの損害補償の上限額が高いほど保険料は高くなる |
開催期間 | 期間が長いほどリスクが高まるため、価格は期間に応じて設定 |
開催場所 | 第三者や設備への影響度により価格が変わる |
過去の事故歴 | 事故経験の有無で補償条件や価格が異なる |
このほか、特約の有無や免責(自己負担額)の設定状況も保険料に影響します。
補償内容と料金負担のバランスを考慮して設定するのがポイントです。
保険料の目安と保険金の種類
ここでは、イベント保険の種類ごとに、保険金の種類と保険料例を紹介していきます。
イベント保険の具体的な価格を知りたい人はぜひ参考にしてみてください。
興行中止保険
興行中止保険は、イベントが中止や延期になった場合の損失を補償するイベント保険です。
興行中止保険の補償が適用された場合に支払われる保険金の種類には以下のようなものがあります。
- 中止損失補償
中止や延期によって失われる予定収入は補償対象外ですが、支出済みの前払費用等を補填します。 - 追加費用補償
中止後に新たに発生する費用(代替イベント開催費用、広告宣伝費用等)が対象。事前に定めた「支払限度率」の範囲内で補償します。
このように興行中止保険では、中止にともなう直接的・間接的損失が幅広く補償されます。イベント収入への影響が大きいだけに重要な保険です。
例として、東京海上日動火災保険が提供する興行中止保険の保険料例を紹介します。
屋外コンサート | |
---|---|
規模 | 費用総額4,000万円 |
開催場所 | 東京都内の野球場 |
開催時期 | 5月上旬(1日間) |
支払いの対象となる事由 | 不測かつ突発的な事由による中止 (出演者の出演不能リスク補償あり) |
支払いの対象となる損害(費用項目) | ・出演料 ・会場設営費 ・プログラム、ポスター、チラシ、チケット印刷費 等 |
支払限度額 | 600万円 |
縮小支払割合 | 90% |
保険料 | 約140万円 |
まつり | |
---|---|
規模 | 費用総額100万円 |
開催場所 | 大阪府の公園 |
開催時期 | 8月下旬(2日間) |
支払いの対象となる事由 | 悪天候リスクによる中止 |
支払いの対象となる損害(費用項目) | ・会場設営費 ・ポスター印刷費 ・器材運搬費用、食材費 等 |
支払限度額 | 100万円 |
縮小支払割合 | 100% |
保険料 | 約10万円 |
引用元:補償プラン・保険料 | 興行中止保険 | 東京海上日動火災保険
※上記のご契約例における保険料は一例です。実際の保険料は、イベントの開催場所、開催時期、お支払いの対象となる事由等に応じて変動します。
損害賠償責任保険
損害賠償責任保険は、イベントの会場や設備の不備により参加者等に損害を与え、主催者が法的賠償責任を負った場合に補償するイベント保険です。
支払われる保険金は以下の通りです。
- 法律上の損害賠償金
参加者への治療費や入院費等の賠償金が対象です。 - 争訟費用
損害賠償に関する弁護士費用や訴訟費用等が対象です。 - 権利保全費用
示談交渉に必要な書類作成費用等が対象です。
損害賠償責任保険では、治療費から訴訟対応まで幅広い費用をカバーしています。
あいおいニッセイ同和損保が引受保険会社となっているイベント賠償責任保険(レクリエーション賠償保険)の保険料例は以下の通りです。
グルメ祭 | ||
---|---|---|
規模 | 延べ来場者 2000人 | |
開催時期 | 8月上旬(1日間) | |
事故あたりの支払限度額 | 身体障害(対人) | 5億円 |
財物損壊(対物) | 1億円 | |
一時払保険料 | 33,190円 |
ソフトボール大会 | ||
---|---|---|
規模 | 延べ参加人数 300人 | |
開催時期 | 8月上旬(2日間) | |
事故あたりの支払限度額 | 身体障害(対人) | 3億円 |
財物損壊(対物) | 500万円 | |
一時払保険料 | 10,240円 |
引用元:イベント賠償責任保険(レクリエーション賠償保険)|グッド保険サービス
※ご契約例の保険料は参考です。保険料は来場者数・補償項目・支払限度額などにより変わります。
傷害保険
傷害保険は、イベント中の事故等で参加者に死亡・後遺障害や入院・通院の損害が生じた場合に保険金を支払う仕組みです。
つまり、イベント保険の傷害保険は損害賠償責任保険の範囲に含まれます。
傷害保険の保険料は、参加者数や補償額、入院・通院の日額設定等によって変動します。
支払われる保険金の種類は以下の通りです。
- 死亡保険金
事故で死亡した場合に支払われます。 - 後遺障害保険金
事故で後遺障害が残った場合に支払われます。 - 入院保険金
事故で入院した場合、入院日数分が支払われます。 - 通院保険金
事故で通院した場合、通院日数分が支払われます。
なお、レクリエーション保険も同様に参加者の傷害事故に対して保険金を支払う点で共通しています。
違いとして、イベント保険の傷害保険は不特定多数が参加するイベント向けで、来場者を含む第三者の傷害も補償対象となります。
一方、レクリエーション保険は参加者の傷害のみを補償するものです。
したがって、参加者の傷害のみを補償目的とする場合は、レクリエーション保険の活用がおすすめです。
レクリエーション保険を契約する場合、対象とする参加者数が一定規模(20人程度)以上であることが加入条件となりますが、1人1日50円程度と割安なのが特徴です。
動産総合保険
動産総合保険は、イベントで使用する機材や備品が損壊・盗難にあった場合に、その損害を補償するイベント保険です。
支払われる保険金には以下のような種類があります。
- 損害保険金
損壊した機材の再調達価格が支払われます。 - 残存物取片づけ費用保険金
損壊物の処理費用が支払われます。 - 原因調査費用保険金
事故原因を調査するのにかかった費用が支払われます。 - 修理費用保険金
損壊物の修理費用が支払われます。
対象機材の機材の種類、時価額、保管場所等によって保険料は変動します。
なお、保険料は自己負担割合の設定によっても影響します。
例えば、損保ジャパン日本興亜の動産総合保険において、カメラやステレオなど、個人が所有する特定の動産を対象とする個人用特定動産契約の場合の保険料例は以下の通りです。
- 保険金額100万円
- 保険期間1年(一括払)
- 保管場所(山梨県)
- 保管される建物の構造級別(鉄骨造(耐火構造))
- 保管中のみ補償
品名 | 自己負担額 | 保険料 |
---|---|---|
時計(置時計、掛時計) | 10,000円 | 12,650円 |
ピアノ、オルガン、エレクトーン | 10,000円 | 7,650円 |
ステレオ、テレビ | 10,000円 | 4,650円 |
引用元:損保ジャパン日本興亜 動産総合保険
※保険の対象を収容する建物の所在地、構造・使用方法、保管状況、保険料払込方法(一括払/分割払)など により保険料は異なります。詳しくは取扱代理店 または損保ジャパン日本興亜までお問い合わせください。
最低保険料に注意
イベント保険の多くは最低保険料が決まっているため、最低保険料の条件を満たせるよう契約前の確認が必要です。
イベント保険の最低保険料については、概ね以下の通りとなっています。
興行中止保険 | 1万円程度から |
---|---|
施設賠償責任保険 | 5,000円程度から |
傷害保険 | 1人1日あたり100円程度から |
動産総合保険 | 対象物の時価額100万円あたり年間2万円程度から |
ただしこれは目安であり、イベントの内容や規模、支払限度額設定の違い等によって最低保険料は異なります。
また複数の補償を組み合わせる商品トータルで最低保険料が決まる場合もあります。
個別のイベント内容に応じた最低保険料の目安は保険保険会社に確認するようにしましょう。
価格を抑えてケガのみを補償したい場合はレクリエーション保険もおすすめ
保険料を抑えて、イベントやレクリエーション中の傷害のみを補償したいなら、レクリエーション保険も検討しましょう。
レクリエーション保険とは、レクリエーション活動やイベントを主催する際に発生する事故やアクシデントによって参加者が負うケガに備える団体向けの傷害保険です。
主催者が一括して参加者全員を被保険者とすることができ、参加者個人の加入は不要となっています。
スポーツイベント、キャンプ、遠足、食事会など、幅広いレクリエーション活動に対応しています。
レクリエーション保険の価格がイベント保険に比べて安い理由
また、イベント保険に比べて割安な点が、レクリエーション保険の最大のメリットと言えます。
イベント保険がイベント中止補償や施設賠償、機材破損補償など幅広い一方、レクリエーション保険は参加者の傷害事故に特化しているためです。
補償の範囲が傷害に限定されているため、1人1日50円程度で加入できます。
主催者を法的責任から守るイベント保険も重要ですが、先ずは参加者の安全を確保する意味でもレクリエーション保険の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
記事まとめ
この記事では、イベントの主催者・責任者の方に向けて、イベント保険の価格や補償内容を詳しく紹介しました。
イベント保険には中止補償や賠償責任、傷害、機材破損への補償があり、対象範囲は広く、参加者数や補償内容によって価格が異なります。
イベントの開催にあたって、イベント保険の補償範囲である「傷害のみ」を補償したい場合はレクリエーション保険もひとつの選択肢となります。
イベントや行事運営の損害リスクを抑えるうえで、保険利用は欠かせません。
この記事を参考に、ぜひイベント保険やレクリエーション保険への加入をご検討ください。