行事やイベントを開催する際には、主催者の方は参加者のケガにどう備えるか悩むことも多いのではないでしょうか。
イベントや行事、レジャーやスポーツなどのレクリエーションを行う場合、レクリエーション保険に加入することで参加者全員のケガに備えることができます。
しかし、仲間内で集まってスポーツ大会をするだけ、みんなでのんびりハイキングをするだけ…といった場合には、わざわざ保険に加入する必要性はあるのか?と思う方もいるでしょう。
そこで今回は、団体でイベントや行事を行う際のリスク対策として、レクリエーション保険の必要性を解説します。
また、レクリエーション保険にあわせて損害賠償責任保険も検討する必要があるケースも紹介。主催者の方が安心・安全にイベントを開催するために必要なリスク対策がわかります。
レクリエーション保険でケガに備える必要性
イベントや行事を行う際、主催者と参加者の間でトラブルになりがちなのが、ケガに関するものです。
主催者はイベント・行事の責任者として安全に開催できるように準備をする必要があります。もし主催者のイベント運営の不備によって参加者がケガをしてしまった場合には、主催者が責任を問われてしまいます。
もちろん、主催者のせいではない個人の不注意が不慮の事故によって参加者がケガをすることもありますが、それでも「ケガをしやすいイベントであれば、最初から万が一を想定して備えを用意しておくべき」と言われかねません。
そういった場合のケガに対する備えとして有効なのが、レクリエーション保険です。
レクリエーション保険は参加者の傷害に備えられる
レクリエーション保険では、一人あたり非常に手軽な保険料で参加者の万が一の死亡または後遺障害、ケガの治療のための通院・入院・手術に備えることができます。
支払われる保険金は、下記のとおりです。
死亡保険金 | 行事やイベントの最中に発生した事故により参加者が万が一死亡した場合、所定の保険金が支払われる。 |
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後遺障害保険金 | 行事やイベントの最中に発生した事故により参加者がケガをし、後遺障害が残った場合、所定の保険金が支払われる。 |
通院保険金 | 行事やイベントの最中に発生した事故により参加者がケガをして通院が必要になった場合、通院1日につき所定の保険金が支払われる。 |
入院保険金 | 行事やイベントの最中に発生した事故により参加者がケガをして入院が必要になった場合、入院1日につき所定の保険金が支払われる。 |
手術保険金 | 行事やイベントの最中に発生した事故により参加者がケガをして手術が必要になった場合、所定の保険金が支払われる。 |
支払われる保険金の金額は、契約者が契約時に所定の条件のもとで自由に設定することができます。
また、レクリエーション保険の基本補償ではケガをした場合のみが補償の対象ですが、特約を付加することで熱中症やウイルス性の食中毒も補償の対象とすることが可能です。
特約の有無は保険会社によって異なるため、特約をつける必要がある場合にはよく確認しましょう。
補償が適用されるケガのケース
レクリエーション保険の補償対象となるのは、イベント・行事を開催している最中に発生した急激かつ偶然な外来の事故によるケガです。
急激:
突発的に発生すること。ケガの原因となった事故から、ケガをするまでに時間が空いていない状態を指します。
偶然:
ケガの原因となる事故が偶然に起こった状況を指します。
外来:
ケガの原因が、被保険者の身体の外からの作用によることを指します。
簡単に言うと、偶然に事故が発生し、その事故がケガの原因であるとはっきり分かる場合にレクリエーション保険の保険金が支払われる、ということになります。
靴ずれや車酔い、しもやけ、むちうちなどは、急激かつ偶然な外来の事故には含まれません。
レクリエーション保険でいう「事故」はなにも交通事故だけではなく、偶然転んでしまった、スポーツの最中にボールがぶつかってケガをした、というようなアクシデントも該当します。
補償が適用される事故・ケガのケースを具体的に挙げると、下記のとおりです。
- サッカー大会で相手が蹴ったボールが手にあたり、指を骨折。通院が必要になった
- ハイキングの最中に斜面で滑って転び、足を捻挫。通院が必要になった
- 遠足の移動中に交通事故にあい、手術が必要になった
- 盆踊りの最中に会場の設備が崩れ、頭にあたった。病院に運ばれ、入院が必要になった
こちらはあくまでも例になりますが、故意ではない転倒によるケガなども補償の対象です。
どんな場合のケガが補償の対象になるか不安な方は、レクリエーション保険の契約時に保険代理店または保険会社に確認してみて下さい。
損害賠償責任のリスクにも備える必要はある?
ここまでレクリエーション保険の必要性を解説してきましたが、レクリエーション保険は基本的には「参加者・主催者の傷害」に対する補償のみです。
参加者のケガのリスクに最低限備えられれば十分では?と思う方もいるかもしれませんが、万全を期するなら参加者だけでなく第三者に対する損害リスクの備えも必要ということを忘れてはいけません。
主催者や参加者がイベント・行事に居合わせた第三者(見学者や通行人など)、またはイベント会場の近隣住民などに何かしらの損害を与えてしまった場合には、損害賠償責任を請求されてしまう可能性があります。
もし開催するイベント・行事の場に第三者も多くいることが予想されるなら、損害賠償リスクに備える「損害賠償責任保険」に加入することをおすすめします。
主催者・参加者が第三者に損害を与えてしまうケースとは
主催者・参加者が第三者に損害を与えてしまうケースは、たとえば下記のような例が挙げられます。
- 野球大会で、打ったボールが近隣住民の家のガラスにあたり、割ってしまった
- マラソン大会で設置していたテントが突風で倒れ、見学者にあたりケガをさせてしまった
- イベント会場の仮設建物の看板が落下し、来場者にあたりケガをさせてしまった
少人数の仲間内だけでちょっとしたレクレーションを行う場合などはそこまで徹底したリスク対策は必要ないかもしれませんが、地域のスポーツ大会やお祭り、催事、式典などのイベントは来場者・見学者も多く、万が一の損害賠償リスクが高くなります。
そういった損害賠償リスクに備えるには、イベント用の損害賠償責任保険が必要です。
イベント用の損害賠償責任保険では、「イベント活動にともなう賠償責任」と、「イベントや行事の運営・管理の不備にともなう賠償責任」に備えることが可能。
主催者や参加者も安心してイベントを行うことができます。
レクリエーション保険だけでは損害賠償責任に備えられない
レクリエーション保険は、基本補償としてケガに対する傷害保険のみを備えているものがほとんどなので、損害賠償責任には備えることができません。
そのため、ほとんどの場合レクリエーション保険とは別に損害賠償責任保険に加入する必要があります。
レクリエーション保険に契約する際には、あわせて損害賠償責任保険にも加入する必要があるかどうか、忘れずに検討して下さい。
注意!レクリエーション保険は「イベント中止の損害」は対象外
イベントや行事を開催する際には、悪天候などの影響でやむを得ず開催を中止することもあるでしょう。
もしイベントが中止になった場合、予約していた会場施設や設備のキャンセル費用などが発生することも多いです。しかし、レクリエーション保険ではこういった「中止による損害」は補償されません。
レクリエーション保険は、あくまで参加者・主催者の傷害に対する保険。損害賠償責任保険がついている保険商品であったとしても、主催者・参加者自身がイベント中止により被った損害は補償対象外です。
もしこのようなイベント中止による損害に備えたいなら、「興行中止保険」に加入する必要があります。大規模なイベントを開催する予定があり、中止時の損害が大きくなりそうだという方は、別途興行中止保険を検討してみて下さい。
まとめ
今回は、レクリエーション保険の必要性を解説しました。ポイントをまとめると、以下のとおりです。
- イベントや行事の主催者は、参加者が安全に参加できるように準備をする必要がある。そんなときに、ケガに備えるレクリエーション保険が便利。
- レクリエーション保険では、不慮の事故や転倒など、イベント・行事中に発生する偶発的な事故・アクシデントによるケガが補償の対象となる。
- イベント・行事の種類によっては、参加者だけでなく来場者・見学者・近隣住民などの第三者に対する損害賠償責任保険も必要。
- レクリエーション保険では「イベント中止による損害」には対応できない。別途興行中止保険に加入する必要がある。
ちょっとしたレクレーション程度ならそこまで念入りに準備をする必要はないと考える主催者の方もいるかもしれませんが、何が起こるかわかりません。
万が一参加メンバーが大きなケガをして、後で揉め事が起こってしまうのは不本意でしょう。それくらいなら、最初からレクリエーション保険に加入して最低限の備えを用意しておく方が、緊急時の負担も少ないはずです。
レクリエーション保険は、イベント・行事一回ごとに加入でき、一人あたりの保険料も非常に安く済みます。自身の安心のためにも、ぜひ加入を検討してみて下さい。
また、イベントや行事の規模によっては、損害賠償責任保険を検討する必要があることも忘れずに。レクリエーション保険とあわせてチェックしてみて下さい。
監修者のコメント
レクリエーション用の賠償責任保険では主催者側が法律上の賠償責任を負担することによって被る損害を補償する保険です。
対象は第三者のみでなく行事参加者に対する主催者側の不手際や落ち度(過失)も補償の対象となります。
レクリエーションを主催する際は加入も検討してみてください。
当記事の監修者:遠山直孝
- 保険コンプライアンス・オフィサー2級
- ファイナンシャルプランナー(AFP)
- 損保大学(法律・税務)※
国立大学卒業後、大手保険会社に27年勤務し、現在は損害保険代理店に所属。営業、企画部門での多彩な経験から、法律・税務を踏まえた実用的な保険の活用に精通しており、日々情報を発信しています。
※損保大学とは、損害保険の募集に関する知識・業務を向上させるために日本損害保険協会が立ち上げた制度。当監修者は「法律・税務」などの知識を深める専門コースを修めています。