イベントや行事の主催者の方は、開催当日に備えてレクリエーション保険に加入していることも多いでしょう。
しかし、悪天候や急なトラブルによってイベント・行事を中止もしくは延期しなければいけない場合、加入したレクリエーション保険も払い戻しまたは延期できるのでしょうか。
また、イベント・行事の中止に伴って発生した金銭的な損害について、レクリエーション保険で補償してもらうことはできるのでしょうか。
今回は、このような「イベント・行事の中止の際のレクリエーション保険の利用法」について解説します。
レクリエーション保険に加入後、イベント・行事が中止になったら?
イベントや行事に備えてレクリエーション保険に加入した後、悪天候や会場トラブルなどによって開催を中止、もしくは延期することもあるでしょう。
そういった場合、加入したレクリエーション保険も中止・延期にあわせて対応が必要です。速やかに対応すれば保険料が解約返戻金として戻ってきたり、イベント延期日に合わせて保険期間も変更してもらうことが可能です。
では、中止・延期それぞれの対応方法を確認していきましょう。
中止の場合には、保険会社から解約返戻金を受け取る
イベントが中止になった場合、速やかにレクリエーション保険を契約した保険会社もしくは保険代理店に連絡をしましょう。
イベント中止のためレクリエーション保険を解約したいと申し出れば、解約返戻金として保険料の全額または一部が戻ってきます。
ただし、予定していたイベント開催日が過ぎた後に中止連絡をした場合には、保険料が戻ってこない可能性があるため、注意して下さい。
イベントが中止になるとわかったときには、なるべく早く連絡することをおすすめします。
延期の場合には、あわせて保険期間も変更できる
もしイベントや行事を延期する場合には、レクリエーション保険の保険期間も延期日にあわせて自動的に変更してもらうことができます。
この時、保険会社や保険代理店にイベントや行事を延期したことを示す証明書の提出が必要となります。
速やかに書類を用意し、レクリエーション保険を契約した保険会社または保険代理店に連絡しましょう。
ただし、保険期間を変更できるのは下記の条件を満たした場合となります。
- レクリエーション保険契約当初の開催日から1ヶ月以内の日程に延期すること
- レクリエーション保険契約当初と同じ開催日数でイベントを行うこと
1ヶ月以上先に延期したり、1日だけ開催予定だったものを延期後は2日間に渡って開催する予定にしたりする場合は、自動変更とならず別途契約手続きが必要です。
こちらの場合も、なるべく早く保険会社または保険代理店に連絡し、必要な手続きを行いましょう。
中止・延期による損害はレクリエーション保険の補償対象外
開催予定だったイベントや行事、レクレーション活動が悪天候やトラブルによって急遽中止になってしまった場合、中止による金銭的な損害が心配という方もいるでしょう。
借りていた会場や手配していた備品・移動者のキャンセル手数料、参加者に配るお弁当のキャンセル料など、開催ギリギリで中止となった際には様々な費用が発生する可能性があります。
このような中止による損害は、レクリエーション保険では補償されるのでしょうか?
結論から言うと、レクリエーション保険ではイベントの中止によって発生した損害は補償の対象となりません。
レクリエーション保険で得られるのは傷害保険だけ
レクリエーション保険で得られる補償は、参加者全員に対する死亡・ケガの補償です。参加者がイベント・行事の活動中にケガを負い、その治療のために入院・通院した場合などに保険金が支払われます。
そのため、もしイベント中止による損害に備えたいなら、「興行中止保険」などに別途加入する必要があります。
レクリエーションに伴う賠償責任保険もあるが、中止の損害は対象外
レクリエーション保険は基本的には傷害保険のみに備えたものです。レクリエーションの賠償責任保険を備えるには契約手続きが必要です。
また、どこの保険会社も契約することができます。
さらに、レクリエーション用の損害賠償責任保険を契約した場合は、参加者や主催者が第三者(見学者や来場者、近隣住民など)の身体・所持品に損害を与えてしまい、法律上の損害賠償責任を問われた際に補償が適用されます。
ただし、損害賠償場責任保険を契約していても、中止によって参加者・主催者が受ける損害に対しての補償はついていないため、注意しましょう。
イベントとり止め時の損害に備えられる保険とは
イベント中止によって受ける損害に備えるには、レクリエーション保険ではなく「興行中止保険(イベント中止保険)」に加入する必要があります。
興行中止保険とは、イベントや行事、レクリエーション活動など、開催予定であった興行が中止され主催者に金銭的な損害が発生した場合に補償が適用されます。
ただし、興行中止保険では契約の対象が「非日常性を伴うもの」とされており、コンサートや花火大会などがその例です。
よって、契約者はイベント会社などの法人が想定されており、一般の方が仲間内で集まって開催するレクレーション活動などは契約対象とはならない点に注意が必要です。
興行中止保険の補償内容
興行中止保険では、開催予定だったイベントが悪天候や交通機関の事故など不測の事態によって中止・延期を余儀なくされた場合に、イベント準備のためにすでに支出していた費用・中止や延期に伴いこれから発生する費用に対して保険金が支払われます。
保険金支払いの対象となる支出は、たとえば下記のようなものが挙げられます。
- 施設使用料
- ゲスト・出演者の招待費用
- スタッフの交通費・人件費
- 広告宣伝費(ポスター・パンフレット作成費、広告掲載費など)
- 警備費用
- チケット発行費用
契約対象となるイベント
興行中止保険の対象となるイベントは、「非日常性を伴うもの」とされています。大規模で、中止時の損害が大きくなると予想されるような催し物が対象です。
たとえば、コンサートや演劇、花火大会などのお祭り、博覧会やコンベンション、スポーツ大会などが挙げられます。
保険料
興行中止保険の保険料は、保険料支払いの対象とする事故・損害、保険金の支払限度額、イベントを開催する場所などによって異なります。
基本的に、興行中止保険は契約者ごとのオーダーメイド設計になることがほとんどなので、保険料も個別に見積り問合せをしてみなければ分かりません。
傾向として、開催するイベントや行事の規模が大きければその分保険料も高額になります。
まずは、保険会社や保険代理店に見積り問合せをしてみて下さい。
まとめ
今回は、イベント中止・延期時のレクリエーション保険の利用法について解説してきました。
イベントや行事が中止もしくは延期になった場合、保険会社や保険代理店に速やかに連絡をすることで、レクリエーション保険の解約または保険期間の変更が可能です。
ただし、保険期間を変更する場合には延期日が1ヶ月以内などの条件があるため、注意が必要です。中止・延期のいずれにしても、まずはすぐに保険会社や保険代理店に連絡することを覚えておいて下さい。
また、レクリエーション保険ではイベント中止に伴い発生した金銭的損害については補償されません。
もし大規模なイベントや行事を開催する主催者の方の中で、中止時の金銭的損害にも備えておきたいという場合には、興行中止保険を検討してみて下さい。
監修者のコメント
レクリエーション保険を契約していて開催日が変更となった場合は、保険会社もしくは取扱代理店にすみやかに連絡することをお勧めします。
自動変更を適用するためには、①一定の条件がある ②通常の請求書類に加えて、行事が順延して開催されたことを証明する「行事主催者発行」の証明書の提出が必要となるためです。
当記事の監修者:遠山直孝
- 保険コンプライアンス・オフィサー2級
- ファイナンシャルプランナー(AFP)
- 損保大学(法律・税務)※
国立大学卒業後、大手保険会社に27年勤務し、現在は損害保険代理店に所属。営業、企画部門での多彩な経験から、法律・税務を踏まえた実用的な保険の活用に精通しており、日々情報を発信しています。
※損保大学とは、損害保険の募集に関する知識・業務を向上させるために日本損害保険協会が立ち上げた制度。当監修者は「法律・税務」などの知識を深める専門コースを修めています。