双六岳(すごろくだけ)は、長野県と岐阜県の境に位置し、高山植物の可憐なお花畑を楽しめる山です。
双六岳山頂からは、槍ヶ岳や穂高連峰などの北アルプスを一望することができ、多くの登山客の憧れの山となっています。
そんな魅力的な双六岳には初心者でも挑戦できるルートが設けられていますので、十分な装備を整えてぜひチャレンジしてみましょう。
この記事では、初心者におすすめの双六岳の登山ルートや周辺の日帰り温泉情報などをご紹介します。
双六岳とは
双六岳は、長野県大町市と岐阜県高山市にまたがって位置している標高2,860 mの山で、お椀を逆さにしたような緩い傾斜の山容が特徴的な山です。
比較的シンプルな地形なので、登山初心者でもチャレンジしやすい山です。
双六岳は「花の百名山」や「ぎふ百山」などに選定されているだけのことはあり、高山植物が豊富にみられる山で、特に「花見平」と呼ばれているお花畑は登山初心者にぜひ見ていただきたいポイントです。
また、双六岳は槍ヶ岳に続く西鎌尾根と鷲羽岳、水晶岳、雲の平へと続く三俣蓮華岳の分岐点にあり、縦走を楽しむ登山家の憧れのルートとなっています。
双六岳の山頂からは、槍ヶ岳や穂高連峰のすばらしい景色を堪能することができるので、登山初心者にもぜひ山頂を目指していただきたいです。
双六岳の難易度は?初心者でも登山可能?
双六岳の難易度がどのくらいなのかを知ることは、登山初心者にとって大切なことです。
「岐阜県 山のレーディング」によると、双六岳の難易度はBまたはCとされており(Aが最も易しくEが難しい)、特に難易度が高いわけではなく難所もそれほどないため、初心者でも十分チャレンジできるでしょう。
ただし、距離が長いため日帰りではなく山小屋に宿泊して、ゆったりとした日程で楽しみながら登山することをおすすめします。
【参考:岐阜県「山のグレーディング」】
https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/101566.pdf
登山初心者を魅了する双六岳の動植物
双六岳は、「花の百名山」に選ばれていることもあり、初夏にはチングルマやクロユリといったさまざまな高山植物が咲き誇ります。
また、秋の紅葉シーズンにはナナカマドやダケカンバなどの美しい紅葉が山全体を赤や黄色に染めます。
そして、運が良ければ特別天然記念物の「ライチョウ(雷鳥)」に出会えるかもしれません。もし出会えたときは、そっとその姿を見守りましょう。
初心者におすすめの双六岳登山ルート
では、初心者におすすめの双六岳登山ルートをご紹介していきます。
双六岳の登山ルートはいくつかありますが、初心者が挑戦できるのは「六岳山頂を往復するルート」と「双六岳・笠ヶ岳を目指すルート」のふたつです。
なお、初心者向けではありませんが、登山経験を積んでからぜひチャレンジしていただきたいルートもご紹介しますので、今後の登山計画にぜひご利用ください。
初心者向け双六岳登山ルート①:双六岳山頂往復ルート
初心者におすすめする双六岳登山ルートのひとつ目は、双六岳山頂を往復するコースで、山小屋を利用する1泊2日の日程となります。
登山初心者でも安心なコースですが、長距離なのでそれなりの体力は求められます。
双六岳山頂往復のルートは以下のような流れで進みます。
歩行時間 | 双六山山頂往復ルート詳細 | |
---|---|---|
1日目 | 8時間前後 | 新穂高温泉→笠新道登山口→わさび平小屋→小池新道登山口 →秩父沢出合→シシウドが原→鏡平山荘→弓折分岐→双六小屋 |
2日目 | 8時間前後 | 双六小屋→双六岳→双六小屋→弓折分岐→鏡平山荘→シシウドが原 →秩父沢出合→小池新道登山口→わさび平小屋→笠新道登山口→新穂高温泉 |
「わさび平小屋」では、大きな木製の水槽に北アルプスの天然水をはって、季節の野菜や果物、飲み物が冷やされており、名物として双六岳登山客の楽しみのひとつになっています。
わさび平小屋の名物を楽しんだら、そこからは岩場や雪渓の上を歩く本格的な登山道の始まりです。初心者の方は特に足元に気を付けて慎重に進みましょう。
「秩父沢」には雪解け水が流れているので、冷たい天然水に触れて気分をリフレッシュしましょう。
「鏡平山荘」付近からは一気に視界が広がり、天気が良ければ槍ヶ岳、西鎌尾根、保高連峰を望むことができ、新鮮な山の空気を存分に味わえます。
弓折分岐以降は稜線沿いの歩きとなり、お花畑が点在しています。
特に「花見平」はおすすめのお花畑で、高山植物を見ることを楽しみにしている初心者の方には、ぜひ時間に余裕をもって堪能していただきたいスポットです。見ごろは例年7月下旬から8月中旬頃です。
花見平を過ぎハイマツ一帯を抜けると双六小屋がありますので、1日目はここで終了です。
登山初心者の方は特にゆっくり休んで、2日目の双六岳山頂までと下山のための体力を十分に蓄えておきましょう。
2日目は、双六小屋を出発して坂を登り、平らな道を歩いていくと双六岳山頂に到着します。
双六岳山頂は、山頂らしいところはなく平原が広がっており、槍ヶ岳や穂高連峰などの大パノラマを楽しむことができます。
帰りは登ってきた道を登山口まで戻って下山となります。
初心者向け双六岳登山ルート②:双六岳と笠ヶ岳を目指すコース
登山初心者におすすめの双六岳登山ルートのふたつ目は、双六岳と笠ヶ岳の両方を目指すコースです。
初心者向けおすすめルート①「双六岳山頂往復コース」よりも歩行距離が長いので、山小屋を2回利用し、2泊3日の日程で登るのが一般的です。
2泊3日のモデルコースとしては、以下のように進みます。
歩行時間 | ルート詳細 | |
---|---|---|
1日目 | 8時間前後 | 新穂高温泉→笠新道登山口→わさび平小屋→小池新道登山口 →秩父沢出合→シシウドが原→鏡平山荘→弓折分岐→双六小屋 |
2日目 | 8時間前後 | 双六小屋→双六岳→双六小屋→弓折分岐 →大ノマ乗越→秩父平→笠新道分岐→笠ヶ岳山荘 |
3日目 | 8時間前後 | 笠ヶ岳山荘→笠ヶ岳→笠ヶ岳山荘→笠新道分岐 →杓子平→笠新道登山口→新穂高温泉 |
歩行時間はあくまでも目安なので、登山初心者の場合はさらにゆとりをもって計画をたてることをおすすめします。
1日目は初心者におすすめの登山ルート①の「双六岳山頂往復コース」と同じなので、そちらを参考にしてください。
2日目。双六岳山頂に登頂した後、弓折分岐まで下ります。弓折分岐は左が鏡平方面、右が笠ヶ岳方面なので、間違えないように右に進みます。
急な登りを超えると弓折岳に到着し、そこから大ノマ乗越まではアップダウンが続きますので、初心者の方はムリせず進みましょう。疲れたときにはウサギギクなどの可憐な花々を見て癒されるのも良いですね。
大ノマ乗越から大ノマ岳山頂までは稜線を歩きますが、狭い道もあるので注意して歩きましょう。抜戸岩を超えると、笠ヶ岳山荘に到着し2日目はここで1泊します。
初心者の方は、2日連続の登山で疲れた身体を山小屋でゆっくりと休め、最終日に備えましょう。
3日目。笠ヶ岳山山頂は笠ヶ岳山荘か10分ほどで到着しますので、朝日が昇る前に出発することをおすすめします。朝焼けは、空と雲海が金色に輝き、その神々しさは言葉を失うほどの美しさです。
また、山頂からは大キレットや穂高連峰などの山々がはっきりと見渡せるので、登山初心者への長時間にわたる登山のとっておきのごほうびとなるでしょう。
笠ヶ岳山頂からの絶景を堪能したら、下山に入ります。
笠ヶ岳山荘から杓子平への道中には、鮮やかなピンクのシモツケソウやオレンジ色のニッコウキスゲなどの高山植物があちらこちらに咲いています。
登山最終日も、可憐な花々に癒されながらゴールまで楽しみましょう。
初心者もいつかはチャレンジしたい「槍ヶ岳への西鎌尾根コース」
登山初心者の中には、槍ヶ岳への登山にあこがれている方もいるでしょう。
双六岳から縦走で槍ヶ岳へ目指すこともできるので、登山経験を積んだらぜひチャレンジしてみましょう。
はしごやクサリ場、岩場、雪渓などがあるので、一定の登山技術が必要になるコースです。
モデルコースとしては2泊3日のコースで、1日目は初心者におすすめのルートと同様に、双六小屋に1泊します。
2日目は双六岳山頂から樅沢岳、左俣乗越、千丈乗越を経て槍ヶ岳山荘、そして槍ヶ岳山頂に登頂し、槍ヶ岳山荘で1泊します。
3日目は槍ヶ岳山荘をスタートして飛騨乗越、千丈乗越を経て槍平小屋に到着し、さらに歩くとゴールの新穂高温泉です。
登山初心者の方は、経験を積んでいつかは槍ヶ岳からの眺望を楽しめると良いですね。
登山初心者必見!双六岳へのアクセス
双六岳への登山が決まったら、アクセス方法についても確認しておきましょう。
特に、初めて双六岳登山に臨む初心者の方は、時間のロスをなくすためにもアクセス方法はしっかりと押さえておきましょう。
双六岳の登山口に最も近いのは「新穂高温泉」の登山口で、登山客だけでなく観光客も多く訪れるので、公共交通機関も利用しやすくなっています。
車で双六岳にアクセスする場合
登山初心者の方が車で双六岳に向かう場合は、以下の経路を参考にしてください。
【東京から】
東京-中央道・長野道(3時間)-松本I.C-R158・安房トンネル(90分)-新穂高温泉
【大阪から】
大阪-名神・東海北陸道(3時間30分)-高山I.C-R158(70分)-新穂高温泉
【名古屋から】
名古屋-名神・東海北陸道(2時間)-高山I.C-R158(70分)-新穂高温泉
【金沢から】
金沢-北陸道(50分)-富山I.C-R41・R471(90分)-新穂高温泉
登山者用駐車場あり
新穂高温泉には、双六岳に登山する方専用の料金無料の駐車場があります。場所は、旅館「深山荘」の入り口近くで、200程度の駐車が可能です。
登山シーズンは平日でも満車となることが多いので、駐車場で困らないように初心者の方は早めの到着を心がけましょう。
公共交通機関で双六岳にアクセスする場合
登山初心者の方が公共交通機関で双六岳に向かう場合は、以下の経路を参考にしてください。
【新宿から】
- 新宿-JR中央線(2時間30分)-松本-バス(2時間)-新穂高温泉
- 新宿-高速バス(4時間30分)-平湯-バス(30分)-新穂高温泉
【大阪から】
- 大阪-高速バス(5時間)-高山-バス(1時間30分)-新穂高温泉
- 大阪-新幹線(50分)-名古屋-JR高山線(2時間10分)-高山-バス(1時間30分)-新穂高温泉
【名古屋から】
- 名古屋-JR高山線(2時間10分)-高山-バス(1時間30分)-新穂高温泉
- 名古屋-高速バス(2時間30分)-高山-バス(1時間30分)-新穂高温泉
- 名古屋-中部国際空港-高速バス(3時間40分)-高山-バス(1時間30分)-新穂高温泉
【富山から】
富山-バス(2時間30分)※栃尾で乗り換え-新穂高温泉
登山と合わせて楽しみたい日帰り温泉情報
双六岳登山を満喫した登山初心者の方に、疲れた身体を癒すための日帰り温泉スポットを厳選して3つご紹介します。
登山初心者におすすめの日帰り温泉①:ひがくの湯
登山初心者におすすめの日帰り温泉のひとつ目「ひがくの湯」は、新穂高温泉地内にある日帰り温泉とお食事が利用できる施設です。
温泉は源泉かけ流しで開放感あふれる露天風呂もあり、お食事は奥飛騨の味をゆっくりと堪能することができます。
館内に展示してある鉄道ジオラマも人気で、鉄道ファンの登山初心者にはぜひ見ていただきたいところです。
- 住所:岐阜県高山市奥飛騨温泉郷中尾442-7
- 電話番号:0578-89-2855
- 営業時間:9:00~19:00(5月及び7月~10月は時間延長有)
- 定休日:無休(ただし、メンテナンス日を除く)
登山初心者におすすめの観光スポット②:中崎山荘 奥飛騨の湯
登山初心者におすすめの日帰り温泉のふたつ目は、新穂高ロープウェイ第1乗場付近にある「中崎山荘 奥飛騨の湯」です。
中崎山荘は、新穂高温泉発祥の宿として知られており、現在は日帰り温泉と食事処を兼ねた湯どころとなっています。
露天風呂からは北アルプスを望められるので、雄大な景色とともに効能豊かな硫黄泉を心行くまで堪能することができます。
登山初心者の方も、ぜひ北アルプスの絶景と温泉の効能で疲れた身体を癒してください。
登山初心者におすすめの観光スポット③:足洗いの湯
登山初心者におすすめの日帰り温泉の3つ目は、「足洗いの湯」です。
360度を北アルプスに囲まれた屋外型の足湯で、地元の岩石を使って造られた大きな足湯は、場所によって深さや温度などが異なるのでいろいろな楽しみ方ができます。
天気の良い日には、焼岳から錫杖岳、笠ヶ岳などの奥飛騨を代表する北アルプスの山々の姿を眺められます。
「日帰り温泉に入りたいけれど時間がない」という登山初心者の方は、足湯だけでも浸かれると疲れがぐっと取れるでしょう。
- 住所:岐阜県高山市奥飛騨温泉郷中尾
- 電話番号:0578-89-2614(奥飛騨温泉郷観光協会)
- 開設期間:通年、24時間(天候等により不定休)
まとめ
双六岳は初心者でも登山できるルートがあり、特に難所もないので比較的チャレンジしやすい山です。
高山植物や紅葉を愛でたり、運が良ければ雷鳥に出会えたりするなど、自然を楽しみながら登山することができます。
ただし、歩行距離が長いので、登山初心者の方は山小屋を利用しながら無理せずゆったりとした日程で登山計画をたてると良いでしょう。
双六岳山頂からの北アルプスの絶景を、ぜひ堪能してください。