白馬岳(しろうまだけ)は、高山植物のお花畑や日本一の大雪渓などさまざまな魅力があり、多くの登山客から人気のある山です。
しかし、標高が2,932mと高いこともあり、登山初心者でも登れるのか疑問に思っている方もいるでしょう。
白馬岳は、初心者でもチャレンジできるルートが用意されていますので、高山植物が好きな方、憧れの大雪渓を間近で見たい方、天空の温泉に浸りたい方など、初心者でも登山が可能となっています。
そこで今回は、初心者にもおすすめの白馬岳登山ルートを3つご紹介するとともに、登山に適した服装や持ち物、また白馬岳へのアクセス方法などを初心者にもわかりやすく解説していきます。
白馬岳に挑戦することを決めた登山初心者の方に、参考にしていただければ幸いです。
白馬岳とは
白馬岳は、北アルプスの中でも登山者に特に人気のある山で、槍ヶ岳とともにその人気を二分しています。
南北に連なっている「後立山連峰」の北部に位置し、標高は2,932mで、長野県、富山県、新潟県の3県にまたがっています。
白馬岳の美しい山容は、白馬鑓ヶ岳(はくばやりがたけ)・杓子岳(しゃくしだけ)とともに「白馬三山」として、地元の方や登山客から親しまれています。
また、白馬岳は花の名山としても知られており、多種多様な高山植物が咲き乱れる季節には「お花畑」を目あてに多くの登山者でにぎわいます。
登山初心者の中にも、お花畑を見に行くことを楽しみにしている方もいるでしょう。
さらに、「白馬岳といえば『大雪渓』」ともいえる日本最大の万年雪が有名で、憧れのトレッキングコースとなっていますが、登山初心者が単独で挑戦するにはレベルが高いので、必ず経験者と一緒に登るようにしましょう。
登山初心者におすすめの季節
白馬岳登山におすすめの時期は、7月中旬から9月にかけてです。
この時期は、チングルマやシナノキンバイ、コマクサ、白馬の名が付いた「シロウマタンポポ」といった固有種など、数々の高山植物の見ごろとなるため、行列ができるほどの混雑となります。
10月上旬になると紅葉が見ごろとなり、10月下旬には降雪が始まります。
初心者向けの白馬岳登山ルート
登山初心者におすすめの白馬岳登山ルートをご紹介します。
ご紹介するルートはいずれも初心者でも登山可能なコースですが、初心者のみのグループや初心者単独での登山は危険を伴うため、必ず経験者と一緒に登山するようにしましょう。
また、初心者向けの登山ルートではあっても、日帰りでの登山は非常に難しく負担も大きいため、時間に余裕を持たせて1泊2日、縦走の場合は2泊3日での登山をおすすめします。
初心者向け白馬岳登山ルート1:「白馬大池山荘」から白馬岳山頂を目指す
初心者におすすめの白馬岳登山ルートのひとつ目は、「白馬大池山荘」から白馬岳山頂を目指すコースです。
白馬大池山荘は、白馬大池湖畔にある山荘で、白馬大池にはサンショウウオが生息していたり、雷鳥坂では運が良ければ雷鳥に会えたりなど、豊かな自然に囲まれています。
白馬大池から白馬岳山頂までは、登りで4時間程度、下りで3時間程度が目安となります。
なお、白馬大池山荘までは、「栂池高原ルート」、「蓮華温泉ルート」、「風吹大池ルート」の3つのルートがあり、それぞれ所要時間や難易度が異なるため、登山初心者はご自身の体力などに合わせてコースを選ぶと良いでしょう。
登山初心者向け①:「栂池高原ルート」
登山初心者におすすめの「栂池高原ルート」は、危険個所がないうえロープウェイに乗って標高を稼げるので、登山初心者でもチャレンジしやすいコースです。
ルートを簡単にご紹介すると、まずは栂池高原駅からパノラマウェイ「ゴンドラリフト」と「ロープウェイ」に乗り、「栂池自然園(標高1,829m)」に到着します(所要時間25分)。
「栂池自然園登山口」から天狗原を経て、宿泊地である「白馬大池山荘」までは約4時間、「白馬大池山荘」から小蓮華山、三国堺を経ると白馬岳山頂で、約4時間かかります。
なお、大雪渓も渡りますが、アイゼンなどは特に必要ないでしょう。
登山初心者向け②:「蓮華温泉ルート」
登山初心者におすすめの「蓮華温泉ルート」も危険個所がないため、難易度はそれほど高くありませんが、「栂池高原ルート」よりも白馬大池までの標高差があるので、登山初心者にはきつく感じるかもしれません。
登山のスタートは「蓮華温泉(標高1,470m)」で、蓮華温泉までは自動車やバスで向かうことができます。
なお、蓮華温泉は「雲上の秘湯」として知られており、雄大な雪倉岳や朝日岳を眺めながら、大自然の中で入浴を楽しむことができます。
登山も温泉も楽しみたい登山初心者には、まさにダブルのお楽しみがあるコースといえます。
ルートを簡単にご紹介すると、蓮華温泉から天狗ノ庭を経て、宿泊先である「白馬大池山荘」まで約3時間かかり、白馬大池山荘から白馬岳山頂までは「栂池高原ルート」と同じです。
登山初心者向け③:「風吹大池ルート」
登山初心者におすすめの「風吹大池ルート」も、難易度が高くないため登山初心者でも十分にチャレンジできますが、所要時間が約5時間にも及ぶため、体力に自信のない初心者はほかのコースを選択したようが良いでしょう。
登山のスタートは「風吹登山口(標高1,778m)」で、登山口までは車で行くことができます。
ルートは、風吹登山口から天狗原を経て宿泊先の白馬大池山荘まで約5時間15分かかり、白馬大池山荘から白馬岳山頂まではほかのルートと同じです。
風吹大池ルートにも雪渓がありますが、アイゼンなどは特に必要ないでしょう。
初心者向け白馬岳登山ルート2:【経験者と一緒】白馬村から白馬岳山頂を目指す
初心者向けの白馬岳登山ルートのふたつ目は、経験者と一緒に白馬村から白馬岳山頂を目指すコースです。
「猿倉荘」からスタートして、1日目は「白馬山荘(標高2832m)」で1泊、2日目に白馬岳山頂を目指す1泊2日のコースです。
スケジュール | 所要時間 | ルート |
---|---|---|
1日目 | 約7時間 | 猿倉荘→白馬尻→大雪渓→村営頂上宿舎→白馬山荘(泊) |
2日目 | 約7時間 | 白馬山荘→白馬岳山頂→三国境→小蓮華山→ 白馬大池山荘→天狗原→栂池自然園・栂池ロープウエイ自然園駅 |
このコースは登山者に大変人気のあるルートですが、大雪渓を通過することもあり、本来は中級・上級者向けのルートなので、登山初心者は必ず経験者と一緒に登るようにしてください。
また、アイゼンなどの装備もしっかりと準備しましょう。
1日目にチャレンジする大雪渓の通過は、通常でも4~5時間はかかります。初心者はさらに慎重に通過する必要があるので、時間に余裕を持って行動すると良いでしょう。
クレバス(雪渓にできた深い裂け目)など近寄ってはいけない箇所もあり、初心者にとって苦しい登りが続きますが、慎重に歩幅を小さくとってゆっくり進みましょう。
大雪渓を登りきると、そこにはお待ちかねの高山植物の宝庫が登山初心者を出迎えてくれます。
宿泊先の「白馬山荘」は、白馬岳山頂直下に位置している、800名まで宿泊可能な日本一大きな山荘です。
山頂レストラン「スカイプラザ白馬」は宿泊登山者以外も利用可能で、大きな窓から北アルプスを眺めながらコーヒーやケーキ、ビールなどをいただきながら贅沢な時間を過ごすことができます。
2日目には、さっそく白馬岳山頂に向けて登山を開始します。
山頂では、言葉にできないほどの感動の大展望が広がり、登山初心者の疲れをすべて消し去ってくれることでしょう。
初心者向け白馬岳登山ルート3:【経験者と一緒】白馬三山の縦走
初心者におすすめの白馬岳登山ルートの3つ目は、白馬岳・杓子岳・白馬鑓ヶ岳の「白馬三山」を縦走するコースで、2泊3日の行程となります。
白馬三山の縦走は、登山の醍醐味を満喫できるとして、白馬連峰で人気の高いコースです。
本来は中級・上級者向けのコースですが、初心者でも経験者と一緒であればチャレンジ可能です。体力に自信があり、登山をさらに楽しみたい初心者はぜひ山岳アルペンの魅力を味わってみましょう。
初心者におすすめなのは、以下のルートです。
スケジュール | 所要時間 | ルート |
---|---|---|
1日目 | 約7時間 | 猿倉荘→白馬尻→大雪渓→村営頂上宿舎→白馬山荘(泊) |
2日目 | 約6時間 | 白馬山荘→白馬岳山頂→杓子岳→白馬鑓ヶ岳→白馬鑓温泉小屋(泊) |
3日目 | 約4時間 | 白馬鑓温泉小屋→小日向山→猿倉荘 |
大雪渓の落石や白馬鑓温泉上部にある鎖場での滑落、白馬鑓温泉と小日向のコル(鞍部)でのスリップなど、注意すべき箇所がありますので、特に登山初心者はあせらず慎重に進んでください。
なお、2日目に宿泊する「白馬鑓温泉」からは、雄大な景色はもちろんのこと、満点の星空やまぶしい朝日を楽しむことができます。
登山初心者におすすめの服装や持ち物
登山初心者にとって、白馬岳に登山する際にどのような服装をして、何を持っていけばいいのか悩んでしまうことがあるでしょう。
そこで、白馬岳の登山シーズンである夏場の服装や持ち物についてご紹介します。
登山初心者におすすめの服装・持ち物:ふもとや周辺の散策時
白馬岳のふもとの小屋やその周辺を散策する場合は、吸水速乾性のある半袖または薄手の長袖のシャツが適しています。
ただし、ふもとであっても標高が高いので、半袖の場合は上に羽織る長袖シャツを携帯すると朝夕の寒さにも安心です。
また、ボトムスは伸縮性のある長ズボン、または半ズボンやスカートの場合は下にタイツなどを着用しましょう。
ほかにも、標高が高く日差しが強いので、つばの付いた帽子は必携です。
登山初心者におすすめの服装・持ち物:白馬岳中腹の山小屋や周辺の散策時
吸水速乾性や伸縮性のある生地の長袖長ズボンが適しています。
なお、ジーンズはごわついて歩きづらく、ジャージ生地は風を通し気温が低下したときに寒さくなってしまうため避けた方が無難です。
寒さ対策だけでなく、草や虫などから肌を守るためにも、素肌はできるだけ出さないよう心がけましょう。
登山初心者におすすめの服装・持ち物:白馬岳山頂付近や稜線
登山によってかいた汗で服が濡れ、休憩した際にそれが冷えると体力を消耗してしまいます。これは、標高の高い場所ほどより激しくなるため、インナーウェアは吸水速乾性のものにしましょう。
また、標高が高いと朝晩の冷え込みも大きいため、フリースやダウンなどのアウターも忘れずに。
強い日差し対策のほかにも、岩場で肌を傷つけないように、ボトムスは伸縮性のある長ズボンがおすすめです。半ズボンの場合も必ずタイツなどで肌を覆ってください。
さらに、岩場や鎖場では手袋があると痛みや冷たさを感じずに済みます。また、落石対策としてヘルメットも持参すると頭部の保護に役立ちます。
アクセス方法
登山初心者が白馬岳登山を決めたら、事前にアクセス方法についてもしっかりと確認しておくことが大切です。
白馬までは、車、電車、バスといった交通手段がありますので、それぞれご紹介していきます。
白馬岳まで車でアクセス
登山初心者が白馬岳まで車アクセスする場合は、以下を参考にしてください。
- 東京から関越・上信越自動車道で204㎞→「長野I.C」→オリンピック道路・R148で50㎞→「白馬」。白馬から栂池高原までは9㎞、猿倉までは10㎞。
- 東京から中央自動車道で186㎞→「岡谷JCT」→長野自動車道で33㎞→「安曇野I.C」→北アルプスパノラマロード・R148で50㎞→白馬。白馬からは1と同じ。
- 大阪から名神高速道で190㎞→「名古屋」→中央・長野自動車道で210㎞→「安曇野I.C」。安曇野I.Cからは2と同じ。
- 大阪から北陸自動車道で300㎞→「金沢」→北陸自動車道で130㎞→「糸魚川I.C」→R148で50㎞→「白馬」。白馬からは1と同じ。
白馬岳まで電車・バスでアクセス
登山初心者が白馬岳まで電車とバスでアクセスする場合は、以下を参考にしてください。
- 東京から北陸新幹線で1時間30分→「長野」→バス65分→「白馬」。白馬から栂池高原までは23分(9㎞)、猿倉までは27分(10㎞)。なお、長野から栂池高原までバスで1時間25分の直通バスあり。
- 新宿から特急あずさで4時間→「白馬」。白馬からは1と同じ。
- 大阪から東海道新幹線で1時間→「名古屋」→特急しなので2時間→「松本」→JR大糸線で1時間40分→「白馬」。白馬からは同じ。
- 大阪から北陸本線特急で2時間40分→「金沢」→北陸新幹線で50分→「糸魚川」→JR大糸線で1時間20分→「白馬」。白馬からは同じ。
なお、白馬からのバスは「アルピコ交通」で、連絡先は以下の通りです。
TEL:0261-72-3155
営業時間:8:00~18:00
まとめ
白馬岳は登山初心者でも登ることができますが、難易度が低くはないため、経験者と一緒に登ることをおすすめします。
日帰りでは厳しいコースとなっていますので、1泊2日または2泊3日などゆっくりと時間をかけ登山を楽しみましょう。
白馬岳では、咲き乱れる高山植物や迫力ある大雪渓、天空の秘境などたくさんの魅力が登山初心者を待っています。