イベント・行事を実施する際は、事故等による参加者の負傷リスクと合わせて、機材や展示物の破損・紛失リスクに対する備えも検討しておくことが大切です。
この記事では、イベント開催時に想定される“物損”のリスクと、物損事故をカバーできる「イベント保険」の仕組み・補償内容等を解説します。
イベント保険を取り扱うおすすめの保険会社も紹介しているので、イベント開催を予定中の主催者・責任者の方はぜひ参考にしてみてください。
物損事故の概要とイベント保険の補償内容
まずは物損事故の概要と、物損事故をカバーできるイベント保険の種類・補償内容等を詳しく見ていきましょう。
物損事故とは
そもそも物損事故とは、物だけが被害を受けた事故のことです。
例えば交通事故が発生した際、自動車や建物等に損害があったものの、死傷者は出なかったといったケースが物損事故に該当します。
一方で、事故によって人が死亡したりケガをしたりした場合は人身事故となります。
物損事故と聞くと一般的に交通事故をイメージする方が多いかもしれませんが、例えば「設営中のテントが倒壊して機材が壊れた」「施設の火災で展示物が焼失した」等の損害も物損事故の一種です。
イベント保険の概要
「イベント保険」とは、団体行事・イベントの開催に伴う様々なリスクに備えるための保険商品です。
イベント中に生じた参加者の事故やケガ、また機材等の破損・紛失に伴う損害をカバーすることができます。
なお「イベント保険」という保険が存在するわけではなく、以下のいずれかまたは複数の保険商品を組み合わせたものを一般的に「イベント保険」と呼びます。
概要 | |
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傷害保険 | 観客が将棋倒しになる等、イベント中にケガ・死亡事故が生じた場合に補償を受けられる |
施設賠償責任保険 | 設営していたテントが倒れてケガ人が出た場合等、主催者側の不備による物損・人損の補償を受けられる |
興行中止保険 | 悪天候や出演者の都合によってイベントそのものが中止となった際に補償を受けられる |
動産総合保険 | 展示品の焼失や運搬中の破損等、イベントに使用する展示品・機器が破損した場合に補償を受けられる |
上記のうち、物損事故をカバーできるのは施設賠償責任保険・動産総合保険の2種類です。
それぞれの詳しい補償内容を見ていきましょう。
施設賠償責任保険
施設賠償責任保険は、設営したテントの倒壊等に伴う物損・人損を補償するイベント保険です。
こちらのイベント保険では、物損事故が発生した際に以下のような補償を受けられます。
損害賠償金 | 民事上の損害賠償責任に基づき、損害賠償請求権者に対して支払うべき治療費や慰謝料、修理費用などを補償する |
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争訟費用 | 当該の損害賠償事案に関連する訴訟費用や弁護士報酬等の費用を補償する |
損害防止費用 | 事故が発生した際に、損害の発生および拡大防止のために生じた費用を補償する |
協力費用 | 事故の解決に向けた引受保険会社への協力に必要となる費用を補償する |
動産総合保険
動産総合保険は、動産(不動産を除く現金・商品・道具等の財産)の紛失や破損に伴う物損の費用を補償するイベント保険です。
こちらのイベント保険では、物損事故が発生した際に以下のような補償を受けられます。
損害保険金 | 損害賠償請求権者に対して支払うべき修理費用などをまかなうための保険金 |
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損害防止費用 | 損害の拡大防止や被害軽減のために生じた費用を補償する |
権利保全行使費用 | 発生した事故に関する賠償責任を第三者に請求できる場合、その権利の保全もしくは行使のために必要となる費用を補償する |
臨時費用保険金 | 損害賠償に伴う諸費用(移動費など)が生じた場合に、損害保険金とは別に支払われる保険金 |
残存物取片付け費用保険金 | 破損した展示品や機材の片付け・処分にかかった費用をまかなうための保険金 |
物損対応のイベント保険を取り扱うおすすめ保険会社3選
続いて、物損事故に対応できるイベント保険(施設賠償責任保険・動産総合保険)を取り扱っているおすすめの保険会社を紹介していきます。
イベント保険への加入を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
東京海上日動(施設賠償責任保険)
東京海上日動では、イベント保険の1つとして施設賠償責任保険を取り扱っています。
こちらは施設管理の不備や構造上の欠陥、また施設の用法に伴う仕事の遂行等を原因とする物損事故・人身事故を補償するイベント保険で、主に以下のようなケースで補償を受けられます。
- 自転車で商品を配達する際に電柱に衝突して自転車を壊してしまった
- スタッフの不注意によってイベント参加者にケガを負わせてしまった
- 施設のガス爆発によりイベント参加者が死亡し、また近隣施設・車両にも損害を与えてしまった
- イベント会場のテントが倒壊し、通行人にケガを負わせてしまった 等
なお、自然災害によるものやサイバー攻撃によるもの等、物損・人損の発生原因によっては補償の対象外となる場合もあるため、あらかじめ東京海上日動のWebサイトやパンフレットで補償範囲を確認しておきましょう。
また施設賠償責任保険は、施設の種類・仕事内容・面積・入場者数といった様々な要素から保険料が算出されるため、詳しい費用は要問合せとなっています。
その他、三井住友海上が販売しているイベント保険の種類・補償内容について以下の記事をご参照ください。
三井住友海上(動産総合保険)
三井住友海上では、イベント保険の1つとして動産総合保険を取り扱っています。
こちらは動産の保管中・運送中・展示中に生じた偶然な事故等を原因とする物損の費用を補償するイベント保険で、主に以下のようなケースで補償を受けられます。
こちらのイベント保険で支払われる保険金の種類・計算方法は以下の通りです。
損害保険金 | 損害額×(保険金額/保険価額)(限度:保険金額または保険価額のいずれか低い額) |
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臨時費用保険金 | 損害保険金×30%(限度:300万円) |
残存物取片付け費用保険金 | 実費(限度:損害保険金×10%) |
修理付帯費用保険金 | 火災、落雷、破裂・爆発による損害の復旧にあたり、三井住友海上の承認を得て実際に支出した必要かつ有益な費用(限度:保険金額の30%または1,000万円のいずれか低い額) |
損害防止費用 | 事故が発生した場合の損害の発生または拡大の防止のために支出した必要または有益な費用(限度:保険金額(損害保険金と合算)) |
権利保全行使費用 | 三井住友海上が取得する権利の保全および行使に必要な手続のために支出した費用 |
その他、三井住友海上が販売しているイベント保険の種類・補償内容について以下の記事をご参照ください。
損保ジャパン(動産総合保険)
損保ジャパンでは、イベント保険の1つとして動産総合保険を取り扱っています。
こちらも動産の保管中および付随する運送中の偶然な事故による物損の費用を補償するイベント保険で、主に以下のようなケースで補償を受けられます。
なお、地震や噴火、津波等を原因とする火災・破損・爆発・延焼損害は補償の対象外となるので注意しましょう。
以下は損保ジャパンの動産総合保険で商品・在庫品契約を結んだ場合の保険料例です。
品名 | 電気製品一式 |
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保険金額 | 1,000万円 |
保険期間 | 1年(一括払い) |
保管場所 | 東京都 |
運送経路 | 東京都→大阪府 |
保管される建物の構造級別 | 鉄骨造(耐火構造) |
保険料 | 75,900円 |
自己負担額 | 10万円 |
その他、損保ジャパンが販売しているイベント保険の種類・補償内容について以下の記事をご参照ください。
記事まとめ
- 物損事故とは、機材や展示物等の“物”だけが被害を受ける事故のこと
- イベント保険とは、行事開催に伴う様々なリスクに備えられる保険商品のこと
- イベント保険のうち、施設賠償責任保険・動産総合保険では物損事故に対する補償も行っている
イベント保険に加入しておくことで、物損・人損を含む幅広いリスクに備えることができます。
なお保険会社によって物損の範囲や補償額は異なるため、開催規模に応じて適切な保険商品を選べるようにしましょう。