イベントの開催中に事故やケガが発生すると、主催者は多額の賠償金を支払わなければならないことがあります。
そのような場合に役立つのが、イベント開催中の対人・対物事故による賠償責任を補償する施設賠償責任保険です。
この記事では以下の内容を解説します。
- 施設賠償責任保険とは?
- イベント開催時に加入するメリット
- 施設賠償責任保険の保険料の目安
施設賠償責任保険について学ぶことで、イベントを開催する際に保険に入るかどうかの判断がしやすくなります。
施設賠償責任保険の補償内容とは?
ここでは施設賠償責任保険がどのような保険なのかについて概要を解説します。
施設賠償責任保険の概要
施設賠償責任保険は、店舗や会社の建物とその業務中に発生した事故による損害を補償する保険です。
具体的には、看板の落下で通行人がけがをした場合や、従業員が業務中にお客様にけがをさせてしまった場合などが補償の対象となります。
この保険は店舗や施設だけでなく、イベント開催中の事故も対象としています。
例えば、お祭りで設置した仮設の建物が倒壊して人にけがをさせてしまった場合なども補償されます。
なお、施設賠償責任保険は1日だけなどの単発契約ではなく、年間での契約が基本になります。そのため、年間を通して定期的にイベントを開催する場合に、この保険が役立つでしょう。
参照:施設賠償責任保険 | ニューインド保険会社 https://www.newindia.co.jp/others/shisetsu2.pdf
参照:施設賠償責任保険 | 東京海上日動 https://jsite.mhlw.go.jp/hiroshima-roudoukyoku/content/contents/001416742.pdf
火災や漏水による損害賠償が補償対象になることも
通常の施設賠償責任保険では、火災や漏水による損害は補償の対象外です。
しかし、オプションに加入することで、これらの損害も補償対象に含めることが可能な場合があります。
例えば、配管からの水漏れが原因で賠償責任を負った場合や、借りている店舗が火災で焼失し、賠償責任を負うことになった場合などが該当します。
イベントの内容によっては、火災や漏水のリスクが高い場合もあるかもしれません。
そのような場合には、施設賠償責任保険のオプションを適切に活用することで、損害賠償責任のリスクに備えることができます。
参照:https://jsite.mhlw.go.jp/hiroshima-roudoukyoku/content/contents/001416742.pdf
【こんな人におすすめ】施設賠償責任保険に加入するメリット
施設賠償責任保険に加入するメリットは以下のとおりです。
- イベント特有のリスクに対応できる
- 高額な賠償金からイベント主催者を守ってくれる
- さまざまなイベントで活用できる
それぞれのメリットについて解説していきます。
イベント特有のリスクに対応できる
施設賠償責任保険はイベントのさまざまな危険に対応しやすく、イベント保険として活用しやすい特徴があります。
例えば、イベントホールや大きな会議場のような多くの人が集まる場所では、思わぬ事故が発生する可能性があります。施設賠償責任保険は、こういった場所で起きた事故による損害を補償します。
イベント会場では、普段とは異なる状況で事故が起こることも考えられます。例えば、来場者が転倒してケガをしたり、展示物が破損したりするかもしれません。
施設賠償責任保険に加入しておくと、このような万が一の場合に対応しやすくなります。
高額な賠償金からイベント主催者を守ってくれる
イベント中の事故で参加者がケガをした時、治療費や損害賠償金が高額になることがあります。
例えば、大型のディスプレイが倒れて参加者が頭を打ち、長期にわたる治療が必要になったとします。この場合、治療費や休業補償なども含め、数百万円から数千万円を超える賠償金が発生する可能性もあります。
イベント開催には、このような大きな負担が発生するリスクが常に伴います。
イベント保険に加入しておけば、万が一の事故の際に保険金が支払われることで、高額な賠償金から主催者を守ることができます。
さまざまなイベントに活用できる
施設賠償責任保険は、さまざまなイベントで発生する事故に対応できる保険です。
展示会、お祭り、スポーツ大会など、大勢の人が集まる場所では、予期せぬ事故が発生するリスクが常に存在します。
それぞれのイベントで起こりうる事故の例を見てみましょう。
- 展示会:展示パネルや展示ブースが来場者に倒れてケガをさせてしまう。
- お祭り:風でテントが倒れて来場者がケガをする。
- スポーツ大会:グラウンドや会場の整備が不十分で、選手や観客が転んでケガをする。
このように、イベントの種類によって起きる事故は違いますが、施設賠償責任保険に加入していれば、これらの全ての事故に備えられます。
さまざまなイベントで想定される事故への備えとして、有効な選択肢となっています。
参照:https://www.newindia.co.jp/others/shisetsu2.pdf
保険金が支払われるケース
施設賠償責任保険では、以下のケースで保険金の支払い対象となります。
- 会場設備の管理不備による事故
- イベント運営中の事故
- スタッフの作業ミスによる事故
ここからは、それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。
会場設備の管理不備による事故
施設賠償責任保険に加入すると、会場設備の不具合で起きた事故に保険金が支払われます。
例えば、展示用パネルが倒れて来場者がケガをした場合や、ステージの装飾が落下して観客がケガをした場合などが対象です。
ほかにも、会場の非常口や通路の管理が十分でなく、急な出来事で来場者がケガをしてしまった場合でも、保険金の支払い対象となります。
イベント運営中の事故
施設賠償責任保険では、イベントの進行中に起きた事故が補償対象になります。
ワークショップで使用する道具の説明中に誤って参加者にケガをさせてしまったときや、会場内での案内中に来場者がつまずいてケガをしたときが当てはまります。
スタッフの作業ミスによる事故
<会場の設営や撤去といったスタッフの作業中にミスが発生し、施設賠償責任保険の保険金支払いの対象となります。
例えば、以下のような場合が支払い対象です。
- 機材を運び込む時に、会場の壁に傷をつけてしまった
- 展示物を設置している時に、利用者の持ち物を壊してしまった
これらの事故は、スタッフの作業ミスによって発生する可能性があります。施設賠償責任保険に加入していれば、これらの事故によって生じた損害賠償責任をカバーできます。
参照:施設賠償責任保険 | 東京海上日動 https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/hojin/baiseki/shisetsu/
参照:施設賠償責任保険 | ニューインディア保険会社 https://www.newindia.co.jp/others/shisetsu3.pdf
保険金が支払われないケース
施設賠償責任保険では、保険金が支払われないケースも存在します。
ここでは、施設賠償責任保険加入時に、保険金が支払われないケースを解説します。
故意に起こした事故による損害
施設賠償責任保険は、予期せぬ事故に備えるためのものです。そのため、故意に起こした事故は補償の対象外です。
例えば、スタッフがわざと会場設備を壊した場合や、イベントの安全管理規則を無視して事故が起きた場合は、補償されません。
主催者の所有物や管理物に対する損害
施設賠償責任保険は、第三者への賠償責任を補償する保険です。
したがって、主催者自身が所有または管理する物への損害は補償されません。
そのため、以下のようなケースは施設賠償責任保険の補償対象外です。
- イベントで使用するために借りた機材を、主催者の不注意で壊した場合
- イベントのために用意した商品や備品が、会場の雨漏りなどで損害を受けた場合
イベント参加者やその持ち物に損害を与えた場合のみ、施設賠償責任保険の補償対象となります。
会場の管理が不適切な場合
会場の管理が不適切であったために起きた事故も、補償の対象外となることがあります。
雨天時の会場養生が不十分で機材が濡れてしまったときや、床の養生をせずに重量物を設置して床材を破損させた場合は補償されません。
また、危険箇所の表示や立入制限が不十分だった場合も、保険金が支払われない可能性があります。
特に、食品を提供するイベントでは注意が必要です。食品の取り扱いに起因する事故は、食中毒などが発生した場合を含め、補償されないことがあります。
参照:施設賠償責任保険 | 東京海上日動 https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/hojin/baiseki/shisetsu/
施設賠償責任保険の保険料の費用相場
施設賠償責任保険の保険料は、施設の種類や規模、事業内容などによって異なるため、一概に金額を示すことは難しいです。
そのため、正確な保険料を知りたい場合は、保険会社に見積もりを依頼するのが確実です。
保険料を算出する際に、保険会社は主に以下の項目を考慮します。
- 施設の面積や構造
- 事業内容(小売業、飲食店、イベント開催など)
- 年間売上高
- 想定される最大収容人数
他には、施設の用途や業種、過去の事故歴なども保険料の算出に影響する場合があります。
正確な保険料の目安を知りたいときは、イベントの内容や規模、使用する施設などの詳しい情報を保険会社に伝え、見積もりを依頼することをおすすめします。
参照:施設賠償責任保険 | 大同火災 https://www.daidokasai.co.jp/wp-content/uploads/2022/07/%E3%80%90%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B410%E6%9C%88%E4%BB%A5%E9%99%8D%E4%BF%9D%E9%99%BA%E5%A7%8B%E6%9C%9F%E7%94%A8%E3%80%91%E6%96%BD%E8%A8%AD%E8%B3%A0%E5%84%9F%E4%BF%9D%E9%99%BA%E3%83%BB%E6%98%87%E9%99%8D%E6%A9%9F%E8%B3%A0%E5%84%9F%E8%B2%AC%E4%BB%BB%E4%BF%9D%E9%99%BA%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88.pdf
参照:施設賠償責任保険 | 東京海上日動 https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/hojin/baiseki/shisetsu/
イベント開催時に使えるおすすめの施設賠償責任保険3選
イベント開催時に活用できる、おすすめの施設賠償責任保険は以下の3つです。
- 東京海上日動の施設賠償責任保険
- 三井住友海上の施設所有(管理)者賠償責任保険
- ニューインディア保険会社の施設賠償責任保険
それぞれについて簡単に紹介していくので、保険選びの参考にしてください。
東京海上日動の施設賠償責任保険
東京海上日動の施設賠償責任保険は、イベント会場で起こりうる様々なリスクに対応できる保険です。
例えば、来場者の転倒事故や、スタッフの作業ミスによる事故などを想定しています。
補償の対象は幅広く、利用者のケガや持ち物の破損に対する賠償金はもちろん、万が一裁判になった場合の弁護士費用なども含まれます。
具体例として、テントの設置が不十分で来場者がケガをした場合や、スタッフが誤ってお客様の服にコーヒーをこぼしてしまった場合などが補償対象です。
また、会場として借りた建物への損害を補償する特約や、利用者の治療費用を補償する特約なども用意されており、必要に応じて補償内容を充実させることができます。
参照:施設賠償責任保険 | 東京海上日動 https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/hojin/baiseki/shisetsu/
参照:施設賠償責任保険 | 東京海上日動(パンフレット) https://jsite.mhlw.go.jp/hiroshima-roudoukyoku/content/contents/001416742.pdf
三井住友海上の施設所有(管理)者賠償責任保険
三井住友海上の施設所有(管理)者賠償責任保険は、施設の管理ミスによる事故や、業務中の対人・対物事故を補償する保険です。
設置していた看板が落下して通行人がケガをした場合や、商品説明中に誤って展示品を落として破損させてしまった場合なども補償対象となります。
また、イベントの特性に合わせて特約を選ぶことができるのが特徴です。
イベントで飲食を提供する際の食中毒への補償や、借りた会場を使用する場合の施設損壊への補償など、イベントの内容に合わせて必要な補償を追加することが可能です。
参照:施設所有(管理)者賠償責任保険 | 三井住友海上 https://www.ms-ins.com/pdf/business/indemnity/shisetsu.pdf
ニューインディア保険会社の施設賠償責任保険
ニューインディア保険会社はインドの国有企業であり、100年以上の長い歴史を持っています。現在、日本を含む26か国で事業を展開しています。
同社が提供する施設賠償責任保険は、シンプルで分かりやすい補償内容が特徴です。
事故が起きたときの補償内容がはっきりしているので、安心して加入できます。
主な補償内容には、施設の管理不備による事故や、スタッフの業務中の事故が含まれます。
例えば、会場設備の不具合で利用者がケガをした場合や、配達中の接触事故なども補償されます。
シンプルで補償内容を理解しやすい保険を選びたい場合は、ニューインディア保険会社の施設賠償責任保険を選ぶのも良いでしょう。
参照:施設賠償責任保険 | ニューインディア保険会社 https://www.newindia.co.jp/others/shisetsu2.pdf
参照:会社概要 | ニューインディア保険会社 https://www.newindia.co.jp/company/
記事のまとめ
この記事では、イベント開催中の思わぬ事故に備えるための「施設賠償責任保険」についてご紹介しました。
イベントでは、参加者のケガや持ち物の破損など、様々な事故が起こる可能性があります。
もし事故が起きてしまった場合、主催者は高額な賠償金を支払わなければならないかもしれません。
施設賠償責任保険は、そうした事故による損害賠償請求に対応する保険制度です。展示会やお祭り、スポーツ大会など、様々なイベントで活用できます。
保険料は施設の面積や入場者数などによって算出されますが、比較的手頃な費用で加入できます。対人・対物賠償はもちろん、施設の管理不備による事故まで幅広く補償されます。
イベントを安心して開催するためには、施設賠償責任保険について理解し、適切な補償内容を選ぶことが大切です。
この記事を参考に、開催予定のイベントにあった施設賠償責任保険を選んでいただければ幸いです。