「部活動の地域移行って、問題点が多いみたいだけど、うちの子の部活動はどうなるのかな?」
「指導者がいなくなったり、費用がすごく高くなったりしたらどうしよう?」
教員の負担を減らすために始まったこの地域移行は大切な取り組みですが、多くの問題点や課題も指摘されているのです。
この記事では、部活動の地域移行の現状について、以下のポイントを分かりやすく解説します。
- 具体的にどんな「問題点」が起きているのか
- 保護者や生徒へのデメリット
- 課題を乗りこえるための解決策
この記事を読めば、部活動の地域移行が抱える問題点の全体像がわかり、ご家庭や地域で今なにを考え、備えるべきかのヒントが見つかります。
まずは現状をしっかり理解することから始めてみましょう。
そもそも「部活動の地域移行」とは?

部活動の運営が学校から地域へと移っていく、この「地域移行」は、教員の負担減や少子化に対応するための大きな改革として国主導で進められています。しかし、この改革にも問題点が存在します。
ここでは、その定義や背景、最新のスケジュールについて詳しく解説します。
部活動の地域移行の定義と目的
「部活動の地域移行」とは、学校が運営してきた部活動を、地域のクラブや団体が担う「地域クラブ活動」へ変えていく取り組みです。この取り組みには様々な問題点も指摘されています。
スポーツ庁や文化庁が中心となり、子どもたちの活動を地域全体で支えることが目的とされています。ただし、実現には問題点があります。
この取り組みは「地域展開」とも呼ばれます。単に運営を移すだけでなく、地域の力で活動をより豊かに広げていく、前向きな意味が込められているのです。しかし実際には問題点も多く存在します。
なぜ今、地域移行が進められているのか(背景)
地域移行が急がれる背景には、大きく二つの問題点があります。
一つ目の問題点は「少子化」です。
生徒数の減少で、特に小規模校では部活動の維持が難しくなっています。希望する部活動がなかったり、チームが組めなかったりするケースが増えているためです。
もう一つの問題点は「教員の働き方改革」です。
部活動の指導が、授業準備などと並んで教員の大きな負担となっていました。休日の指導時間も増え、専門外の指導を担う負担もあり、見直しが求められていたのです。
地域移行には、これら二つの問題点を解決し、子どもたちの活動機会と教員の負担軽減を両立させる狙いがあります。
「いつから」本格実施?現状のスケジュール
国の計画では、2023年度から2025年度までの3年間を「改革推進期間」とし、まずは休日の部活動から地域移行を始め、体制を整えることとしていました。しかし、この計画にも問題点がありました。
当初はこの3年間で休日の移行を終える目標でしたが、全国一律での移行には課題が多いことが判明します。この問題点は予想以上に深刻でした。
国の調査で、2025年度末までに休日の移行が完了する見通しが37%に留まったことなどから、2026年度から2031年度までの6年間を「次期改革期間」として新たに設定する方針が示されました。
次期改革期間では、休日の活動は原則すべて地域展開を実現し、平日の活動についても改革を進めることになります。
合計9年間の長期的な計画で、現実的な定着を目指す方針へ転換した形です。
部活動の地域移行における5つの大きな問題点・課題

部活動の地域移行には、理想とは裏腹に多くの現実的な問題点が立ちはだかっています。
ここでは、特に深刻な5つの問題点・課題を具体的に見ていきます。
1.指導者の不足と質の担保
最大の問題点(課題)は、地域クラブで指導を担う人の確保です。
自治体の7割以上が「指導者の量の確保」をこの地域移行における、最重要問題点として挙げています。
特に人口の少ない地域や、文化部活動では指導者を見つけること自体が難しい状況です。
そして、この指導者不足の問題点は量だけではありません。専門知識を持つ「質」の高い指導者も不足しています。
適切な指導が受けられなければ、生徒のケガのリスクが増えるかもしれません。
背景には、指導者への報酬が不安定であったりするなど、なり手を増やす上での構造的な問題点があるのです。
2. 財源の確保と保護者の費用負担の増加
学校教育の一環だった部活動が地域移行することで、財源面での問題点が生まれます。
自治体にとっては、部活動を続けるための財源確保が大きな問題点となっています。
国の補助金などに頼る仕組みでは安定性に欠け、指導者への謝礼にも地域差が出ています。
同時に、保護者の費用負担が増えることは避けられないでしょう。
これまでの部費に加え、会費や交通費、保険料などが新たにかかるためです。
家庭の経済状況によって、子どもが活動に参加できるかどうかが左右される懸念があります。
これは、新たな教育格差を生むリスクをはらんでいるといえるでしょう。
3.地域の「受け皿」不足と活動場所の問題
生徒の活動を実際に運営する地域の組織、つまり「受け皿」が多くの地域で不足しています。
NPO法人や地域の協会、民間事業者などが想定されています。
しかし、多くはボランティアで運営されており、会計や法律などの専門的な運営能力が足りないケースも少なくありません。
特に、文化活動の受け皿はスポーツに比べてさらに少ない傾向です。
活動場所の確保も問題点です。
引き続き学校の施設を使うことが基本ですが、利用ルールなどの調整が必要です。
地域移行後に学校以外の施設(部活動の活動場所)を使えば使用料がかかり、それが会費として保護者の負担増につながる可能性もあります。
4.地域間格差(都市部と地方)の拡大
指導者や財源、受け皿といったリソースは地域によって偏りがあり、地域移行を進める上で深刻な問題点となる格差が生まれています。
特に人口が少ない地方では、指導者や受け皿となる団体の確保が都市部より困難です。 これにより、以下のような活動機会の格差が広がる点が指摘されています。
- 希望する活動の選択肢が限られる
- クラブが成立しない
また、公共交通機関が乏しい地域では、活動場所への移動が大きな負担となります。これは生徒や保護者の送迎負担(時間的・経済的)に加え、指導者の確保を一層難しくする要因にもなっています。
5.学校と地域団体の責任の所在・連携不足
部活動の地域移行によって主体が学校から移ると、事故やトラブル時の責任の所在が曖昧になりがちです。
これまでは学校が管理責任を負い、公的な災害共済給付の対象でした。
しかし、地域クラブでは運営主体が多様化し、学校の管理外となるため、安全確保の体制を別途整える必要があります。この責任の線引きや体制整備が不明確な点が課題となっています。
また、円滑な移行には、学校や教育委員会、運営団体などの緊密な連携が欠かせません。
しかし、こうした関係者間の調整役となる「協議会」の設置が遅れている(または予定のない)自治体もあります。
これらの問題点を解決し、責任の所在を明確にし、関係者がしっかり連携できる体制づくりが急がれています。
地域移行に伴うその他のデメリット

ネット申込みのデメリット
部活動の地域移行は教員の負担を減らす一方、これまで見えにくかったコストが表面化するなど、新たな問題点も生じさせています。
ここでは、制度の大きな問題点とは別に、地域移行によって家庭や生徒個人に生じる具体的なデメリットを解説します。
保護者の送迎などの負担が増える
活動場所が学校から地域の施設へ移ることで、保護者の負担が増える可能性があります。
これまでは学校内で活動が完結することがほとんどでした。
しかし、活動場所が広くなると、特に公共交通機関が少ない地域では、保護者の送迎が必要になるでしょう。
これは、移動にかかる費用だけでなく、保護者の時間的な負担も生み出します。実際に多くの保護者が「活動場所への送迎」を心配な点として挙げています。
実際に多くの保護者が、以下のような点を心配な点として挙げています。
- 送迎の負担が時間的・経済的に増えること
- 生徒が徒歩や自転車などで、移動する際の安全が確保できるか
共働き世帯などにとっては、活動を続けられるかどうかに関わる深刻な問題点とも言えるのです。
生徒の参加機会が減少する懸念
部活動の地域移行という変化によって、かえって生徒の参加機会が減ってしまうという問題点が懸念されます。
学校の部活動は、友人との交流や放課後の「居場所」としての役割も持っていました。
専門的な技術を磨くことだけが、参加の理由ではなかったのです。
地域移行で地域クラブになり活動が有料になったり、移動が大変になったりすると、気軽に参加していた生徒が部活動から離れる懸念があります。
また、地域によっては受け皿となる団体の数が限られ、以下のような事態も考えられるでしょう。
- 希望する種目の活動が近くにない
- 移行後も大会や記録会に参加できるか不明瞭になる
経済的格差がスポーツ・文化格差につながる
最も心配される地域移行の問題点(デメリット)の一つが、家庭の経済状況が子どもの部活動の機会に直接影響することです。
これまでは教員の熱心な指導などもあり、少ない費用で活動ができていました。部活動の地域移行では「活動の対価を支払う」という受益者負担が原則となります。
指導者への謝礼や施設利用料、交通費などが、各家庭の負担となるためです。「お金に余裕のある家庭の子だけが参加できる状態になるのでは」という声も上がっています。
経済的に困難な家庭への支援が十分でない限り、経済的な格差がそのままスポーツや文化活動の体験格差につながる恐れがあるのです。
デメリットだけではない!地域移行が持つ3つのメリット

部活動の地域移行は多くの問題点や課題を抱えていますが、本来は生徒や教員、地域にとって重要な利点を持つものです。
ここでは、地域移行がもたらす主な3つのメリットについて解説します。
教員の長時間労働の是正につながる
部活動の地域移行が目指す大きなメリットは、教員の大きな負担であった休日の部活動指導を減らし、長時間労働を正すことです。
国の方針では、休日の部活動指導を望まない教員が従事しなくて済む体制づくりが明記されました。
これにより、教員は授業準備や生徒指導といった本来の業務に集中できるのです。教育の質の向上や、ワークライフバランスの改善にもつながると期待されています。
専門的な指導者による技術・意欲の向上
地域移行によって、生徒は専門的な知識や技能を持つ指導者から直接指導を受ける機会が生まれます。
これまでは競技経験のない教員が顧問を務めざるを得ないケースもありました。地域のスポーツクラブなどに所属する経験豊富なコーチから学ぶことで、技術や競技意欲の向上が期待できるのです。
また、学校単位では難しかった多様な活動の選択肢が増え、生徒の可能性を広げることにもつながります。
地域のスポーツ・文化コミュニティの活性化
部活動が地域に開かれると、活動の受け皿となる地域の団体が活性化すると考えられます。
「地域の子供たちは、学校を含めた地域で育てる」という意識のもと、多世代の交流が促されることになるのです。
その結果、地域全体の絆が深まる効果も期待できるでしょう。
課題・問題点を乗り越えるための解決策

部活動の地域移行が直面する問題点・課題に対し、全国で多様な解決策が模索されています。
ここでは、指導者、財源、受け皿の確保といった具体的な取り組みを見ていきます。
外部指導者バンクの整備と人材活用
部活動の地域移行における指導者不足という問題点の解決策として、自治体が「指導者バンク」を整備する動きが広がっています。
これは、地域にいる指導可能な人材を発掘・登録し、学校やクラブのニーズと結びつける制度なのです。
茨城県や牛久市の例では、教員OBだけでなく、学生や地域住民も幅広く募集しています。
登録後は体罰防止などの研修が義務付けられており、指導の質と安全性を保つ仕組みが整えられています。
自治体による財政支援と受益者負担の適正化
持続可能な運営には、財源の確保が欠かせません。
多くの自治体では、自治体の補助金と、参加者が支払う「受益者負担(参加費)」を組み合わせています。
運営団体の設立費用などは補助金で、指導者への謝礼といった運営費は参加費で賄うのが一般的な形です。
家計への負担も考慮し、アンケート結果などに基づいて参加費を妥当な金額に設定するといった工夫も見られます。
既存の地域クラブ・NPOとの積極的な連携
活動の「受け皿」をゼロから作るのではなく、既存の組織と連携する方法も効果的です。
地域にすでにある総合型スポーツクラブやNPO、文化団体などが、部活動の受け皿として機能し始めています。
例えば山形県小国町では、NPO法人に休日の部活動指導を業務委託し、その運営ノウハウを活用しています。
これらの団体が持つ専門性や地域とのつながりを活かすことで、安定した活動を効率的に実現できるのです。
※参照:公益財団法人日本スポーツ協会「総合型地域スポーツクラブ メールマガジン第173号(NPO法人おぐにスポーツクラブYuiの例)」
https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/kurabuikusei/MailMagazine/R5/MM173_oguni-yui.PDF
複数校の合同チーム化やオンライン部活動の導入
少子化による部員不足や指導者不在といった問題点の解決には、学校の枠組みを超えた工夫が求められます。
近隣の複数校でチームを作る「合同チーム化」は、団体競技などを継続する現実的な手法であり、選択肢の拡大にも繋がります。
また、ICT(情報通信技術)の活用も選択肢の一つです。部活動オリエンテーションで動画を共有し、全校生徒へ周知・広報を行うといった活用がされています。
部活動の地域移行に関するQ&A

先行している自治体やモデル校の事例はある?
はい、すでに全国の自治体で様々な先行事例が始まっています。国も「実証事業」として各地の取り組みを支援しており、令和6年度には525市区町村が参加、その成果を公開しているのです。
例えば、長崎県長与町ではNPOが主体となり、休日の運動部活動を地域クラブへ移行させました。また、長野県南佐久郡のように、複数の町村が連携して広域的なクラブを運営する形も見られます。
このように、各地域が実情に合った最適な方法を模索している段階と言えるでしょう。
もし移行先のクラブに参加したくない場合はどうなる?
結論から言うと、地域クラブへの参加は任意です。参加したくない場合、無理に入る必要はありません。
この地域移行の取り組みの目的は、生徒の選択肢を広げることにあるためです。参加しない場合は、部活動に所属しないという選択になります。
スポーツ庁は、部活動を「生徒の自主的、自発的な参加により行われるもの」としており、生徒の意思に反して強制的に加入させることがないよう求めています。
まとめ

この記事では、「部活動の地域移行」の概要と、そこに潜む「問題点」を詳しく見てきました。教員の負担軽減という大切な目的で始まった地域移行ですが、まだ多くの課題が残っていると分かりました。
地域移行の主な問題点として、指導者や活動場所の不足、保護者の費用負担増加が挙げられます。一方で、専門的な指導を受けられるといった利点も紹介しました。
まずは自分の住む町で、地域移行がどうなっているか、どんな課題があるのか、関心を持つことから始めてみませんか。
みんなで協力して、これらの課題を乗り越え、安心して部活動ができる未来を考えていきましょう。





