テニスやゴルフなどのスポーツを屋外で楽しむ人は多いでしょう。
夏になれば熱中症により緊急搬送されたニュースをよく耳にします。
夏のレジャーは、ケガだけでなく熱中症になった場合の補償も気になるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、熱中症特約に注目し、レジャー保険で熱中症は補償されるかどうかについて詳しく解説します。
熱中症は「急激かつ偶然な外来の事故」に該当しないためレジャー保険の補償対象外
熱中症はレジャー保険の補償の対象外です。まずは対象外となる理由を解説します。
この理由は、傷害保険の対象かどうかを考える際の基本となりますので、知っておくと保険の理解がしやすくなります。
レジャー保険(傷害保険)が補償している「ケガ」の定義は、「急激かつ偶然な外来の事故によるケガ」です。
これら「急激」「偶然」「外来」の3要件をすべて満たす必要があります。
傷害保険の3要件「急激」「偶然」「外来」
「急激」
「事故が突発的で傷害発生までの過程において時間的間隔がないことや事故の発生が被保険者にとって予測・回避できないものであったこと」を意味します。
たとえばハイキングで長時間歩いたことで靴ずれになった場合、突発的ではなく、継続的な行為による結果です。
「偶然」
「事故の原因または結果の発生が被保険者とって予知できないことや被保険者の意思に基づかないこと」を意味します。
「原因が偶然であること」「結果が偶然であること」「原因と結果が偶然であること」のいずれかに該当する必要があります。
たとえばスキー中にほかの人と接触してケガをした場合は偶然ですが、足をすでに骨折していて無理にスキーをして症状が悪化した場合は偶然とはいえません。
「外来」
「事故の原因が被保険者の身体外部からの作用によること」を意味します。
たとえばゴルフプレー中に、ほかの人が打ったゴルフボールに当たってケガをした場合は、外来に該当しますが、病気による入院や手術は対象外となります。
上記の3要素を考えると、熱中症は「急激」「偶然」に該当しません。
このように「急激かつ偶然な外来の事故」かどうかを踏まえるとわかりやすいでしょう。
熱中症のほかにも、靴ずれや車酔い、しもやけ、細菌性食中毒なども、上記の3要素を満たさないため、傷害保険の対象外になります。
しかし、レジャー保険(傷害保険)のなかには熱中症も補償の対象となっている商品もあります。
これは「熱中症特約」が付帯されているためです。いくつか保険商品を紹介します。
熱中症に備えられるレジャー保険(傷害保険)
ここまでレジャー保険(傷害保険)の補償の対象について解説したように、基本的な補償では熱中症は対象外になります。
しかし、レジャー保険に熱中症特約を付帯している商品であれば、熱中症も補償されます。
具体的にどのような保険商品があり、どのように補償されるかまとめます。
熱中症特約を付帯できるおもなレジャー保険(傷害保険)
保険会社・商品名 | 特約名 | 対象となる保険金 |
---|---|---|
損保ジャパン THE カラダの保険 |
熱中症特約 | 死亡保険金、後遺障害保険金、入院保険金、手術保険金、通院保険金 |
あいおいニッセイ同和損保 ケガの保険S |
熱中症危険補償特約(死亡補償対象外型) | 傷害後遺障害保険金、傷害部位・症状別保険金、傷害医療費用保険金、傷害長期入院時一時保険金、傷害長期入院保険金 |
au損害 ケガの保険 日常の事故 |
熱中症補償特約 | 後遺障害保険金、入院一時金、入院保険金、手術保険金、通院保険金 |
三井住友海上 GK ケガの保険 (パーソナル生活補償保険) |
熱中症危険補償特約(死亡補償対象外型) | 傷害後遺障害保険金、傷害部位・症状別保険金、傷害入院保険金、傷害手術保険金、傷害通院保険金 |
上記の4商品の補償内容の特徴から、熱中症特約についてのポイントをまとめます。
基本的に死亡保険金は対象外
熱中症特約を付帯すると、熱中症で入院した場合や通院した場合に保険金を受け取れますが、死亡保険金は対象外となるのが一般的です。
あいおいニッセイ同和損保や三井住友海上の特約名には「死亡補償対象外型」と明記されています。
ただ、2022年8月に損保ジャパン「THE カラダの保険」は大手損保として初めて死亡保険金も対象としました。
そのため、以後は死亡保険金も補償の対象とする商品が増えるかもしれません。
熱中症特約を付帯できる商品の保険期間は1年
レジャー保険には1日単位で加入できるタイプも多く販売されていますが、熱中症が増える夏場だけ加入者が増えてしまう可能性があるため、保険期間1年の保険でのみしか補償できないと考えられます。
そのため1日単位で加入できる「レジャー保険」というより年間契約の「傷害保険」として販売されています。
熱中症特約の補償範囲が異なる
あいおいニッセイ同和損保「ケガの保険S」では、熱中症特約が傷害後遺障害保険金、傷害部位・症状別保険金、傷害医療費用保険金、傷害長期入院時一時保険金、傷害長期入院保険金と多くの保険金に反映されます。
もともと「ケガの保険S」には保険金の種類が多いためですが、その分、熱中症特約を付帯すると、ほかの商品より保険料の上がり具合が大きくなる可能性があります。
この点は、補償内容と保険料とのバランスを考えて選ぶとよいでしょう。
なお熱中症特約が付帯していなくても、事故の状況によっては、熱中症による事故に該当せず、保険金が支払われる場合もあります。
自分で判断せず、保険会社に問い合わせて確認しましょう。
レジャー保険以外で熱中症に備えられる保険はこちら!
レジャー保険以外でも熱中症に備えられる保険はあります。
たとえば東京海上日動の場合、「トータルアシストからだの保険(傷害定額・ゴルファー)」には熱中症特約を付帯できませんが、企業・団体向けの保険に熱中症特約が付帯できます。
東京海上日動の商品で熱中症特約を付帯できる商品には次のようなものがあります。
熱中症特約を付帯できる東京海上日動の商品
- 団体総合生活保険(こども傷害補償)
- 総合生活保険(傷害補償・こども総合補償)
- 行事(レクリェーション)参加者の傷害危険担保契約
- 施設入場者の傷害危険担保契約
- 学校契約団体傷害保険
特約付帯で熱中症も補償の対象となるレクリエーション保険がおすすめ
レクリエーション保険もレジャー保険と同じく傷害保険です。
レクリエーション保険では、レクリエーション行事主催者が保険契約者となり、レクリエーション行事参加者を一括して契約します。
レクリエーション行事の参加者全員が被保険者(補償の対象者)となり、レクリエーション行事参加中のケガを補償する団体保険です。
基本補償に特約を付帯することで、熱中症による傷害をカバーできるレクリエーション保険商品がいくつかあります。
レクリエーション保険の特徴
- レクリエーション行事参加者として1日20名以上いることが条件
- 行事参加者全員が保険の対象で、同じ保険金額
- 保険金請求時には、事故の状況、参加者全員の氏名・生年月日を報告する必要がある。
- 行事参加者数が多いほど(参加者数の条件を満たせば)、割引率が上がる。
- レクリエーション行事の種目によって(リスクによって)、適用される料率が異なる。
※ケガのリスクの高い行事種目ほど、保険料は高くなります。
上記でも紹介した通り、多くのレクリエーション保険では行事参加者20名以上を加入条件としているケースが多いです。
もし行事参加者が20名以上いる場合で、かつ熱中症が起こりやすい夏や、屋外でのレクリエーション行事開催を主催している場合は、レクリエーション保険への加入をおすすめします。
おもな補償(ケガの補償)
保険金の種類 | 保険金が支払われる場合【保険金の額】 |
---|---|
死亡保険金 | 保険期間中の事故によるケガで、事故発生日からその日を含めて 180 日以内に死亡した場合。【死亡・後遺障害保険金の金額】 |
後遺障害保険金 | 保険期間中の事故によるケガで、事故発生日からその日を含めて 180 日以内に身体に後遺障害が発生した場合に支払われる保険金。後遺障害の程度に応じた保険金が支払われる。【死亡・後遺障害保険金の金額×4%~100%】 |
入院保険金 | 保険期間中の事故によるケガで、事故発生日からその日を含めて 180 日以内に入院した場合に支払われる保険金。【入院保険金日額×入院日数】 |
手術保険金 | 保険期間中の事故によるケガで、事故発生日からその日を含めて 180 日以内にそのケガの治療のために約款所定の手術を受けた場合に支払われる保険金。【入院保険金日額×10倍(入院中の手術)】【入院保険金日額×5倍(左記以外)】 |
通院保険金 | 保険期間中の事故によるケガで、事故発生日からその日を含めて 180 日以内に通院した場合に支払われる保険金。【通院保険金日額×通院日数】 |
上記のおもな補償に、次のような特約を付帯できます。
熱中症特約 | 被保険者が急激かつ外来による日射または熱射によって身体に障害を被った場合にも、保険金が支払われる。 |
---|---|
食中毒特約 | 被保険者が細菌性食中毒またはウイルス性食中毒によって身体に障害を被った場合にも、保険金が支払われる。 |
このようにレクリエーション保険であれば、熱中症特約を付帯できます。
また前述したレジャー保険4商品とは異なり、1日単位で加入できる点も特徴です。
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スポーツなどの目的に合わせて選ぶのがポイント
レジャー保険は、スポーツやレジャー、イベントなどの目的に合わせて選ぶ必要があります。
夏に屋外でレジャーを楽しむ機会が多い人にとっては、熱中症特約を付帯できるかどうかがポイントになるでしょう。
そのほか、個人で加入するか、行事主催者が加入するかによっても選ぶ方法は異なります。
また携行品損害補償や個人賠償責任補償が必要かどうかによっても異なるでしょう。
保険を利用する目的を明確にし、不明な点は保険会社や代理店に質問するなどしてから加入しましょう。