大規模なイベントや不特定多数のお客さんを自由に招くようなお祭りを行う際、万が一を考えてレクリエーション保険に入りたいとお思いの方もいらっしゃると思います。
しかし、レクリエーション保険では契約する際に参加者の人数・名前を名簿にまとめておく必要があるため、不特定多数の参加者には対応できません。
ではどうすればいいか。不特定多数の参加者に対する補償を得るには、レクリエーション保険ではなく「イベント賠償責任保険」が有効です。
この記事では、不特定多数が参加するイベント・行事に保険をかける方法を解説します。
不特定多数のお客さんが来るような大規模なイベント・行事を行う方は、ぜひ参考にしてみてください。
レクリエーション保険では不特定多数のケガに対応できない
残念ながら、レクリエーション保険では、不特定多数のお客様を対象とするイベントには対応していません。
そもそもレクリエーション保険とは、参加者数が20名以上の団体を対象に、行事参加中のケガや傷害に対する治療費用などを補償する保険です。
レクリエーション保険の中には、ケガの治療費だけでなく、主催者が請求される法律上の損害賠償責任も補償するものがありますが、多くの場合はケガに対する補償が基本です。
レクリエーション保険では、参加者数が20名以上の場合であっても、不特定多数の参加者が来るような「参加者を特定できない場合」には契約することができません。
というのも、レクリエーション保険は名簿等で行事参加者が把握できるようになっていることが契約の条件となっているためです。
事前に名簿で参加者をまとめておく必要がある
レクリエーション保険に加入する際には、事前に名簿を作成し、参加者数と参加者名が客観的に把握できる必要があります。
レクリエーション保険の保険金がおりるような事故が起こった際、実際に保険金支払いの手続きをとるためには、被保険者の情報が必要となります。そのため、事前に名簿を用意しておくことは必須条件となります。
こういった理由があるため、人数が分からない不特定多数の参加者が来るお祭りや学園祭などのイベントにはレクリエーション保険は使えないのです。
不特定多数の参加者には「イベント賠償責任保険」が有効
大規模なイベントやお祭りなど、不特定多数の参加者が来る催しものでのリスクに備えるには、レクリエーション保険ではなくイベント賠償責任保険が有効/です。
イベント賠償責任保険は、イベント開催中に発生した事故によって主催者が負担する法律上の損害賠償責任を補償してくれます。
多種多様なイベント・行事に対応しており、行事参加者の人数と名前がわかる名簿も必要ないため、不特定多数の参加者にも対応可能。ただし、保険金を請求する際に入場・来場者数の人数を把握できる必要があるため、受付などでカウントしなければいけない点に注意。
とはいえ、レクリエーション保険のように人数・名前が把握できる名簿が必要ないため、より柔軟に契約できる保険と言えるでしょう。
主催者が問われる法律上の賠償責任請求に備える
不特定多数の参加者がいても加入できるイベント賠償責任保険は、「主催者が負担する法律上の賠償責任を補償する」という点がポイントです。
レクリエーション保険は、参加者がケガをした際、参加者に対して治療費を補償するもの。
一方イベント賠償責任保険では、不特定多数の方が参加するイベント会場で、会場の不備や運営上の不手際などによって事故が起こった場合に、主催者が負担する損害賠償責任を補償してくれるものになります。
たとえば、運動会会場のテントが倒れて参加者がケガをし、主催者が損害賠償を請求された際などに備えることが可能です。
レクリエーション保険 | イベント賠償責任保険 |
---|---|
参加者が事前に分かっているイベント・行事参加者に対して、イベント参加中に負ったケガに対する治療費を補償するもの | 不特定多数の参加者が参加するイベント・行事の主催者に対して、会場の不備などで起こった事故が原因となる法律上の損害賠償請求を補償するもの |
こういった不特定多数の参加者に対応するイベント賠償責任保険は、様々な損害保険会社で販売されています。
三井住友海上では『レジャーサービス施設費用保険』、共栄火災では『商売の達人(企業総合賠償責任保険)』などの商品名になっています。
三井住友海上「レジャー・サービス施設費用保険」
https://www.ms-ins.com/business/cost/leisure/
共栄火災「商売の達人(企業総合賠償責任保険)」
https://www.kyoeikasai.co.jp/pdf/corp/liability/shobai.pdf
イベント賠償責任保険の補償内容
イベント賠償責任保険の補償対象となるケースは、大きく分けて2パターンあります。
①施設や設備などの構造上の欠陥や、管理不備による事故
- 例)強風の中開催された町民体育大会で、突風のためテントが倒れ、柱が参加者にあたりケガをさせた。
- 例)イベント会場に設置した看板の留具が不十分だったため落下し、来場者にあたりケガをさせた。
②行事等での不注意による事故
- 例)展示会でお客さまを誘導している際に、誘導の不手際によりケガ人がでた。
- 例)展示していた販売商品の説明中、誤って商品を来場者の足の上に落としてしまい、ケガをさせた。
このような場合、イベント賠償責任保険で補償することができます。
保険料は、イベントや行事の内容によって異なるため、保険会社に問い合わせをして見積もりをとる必要があります。
イベント賠償責任保険で支給される保険金
イベント賠償責任保険の補償対象となる場合、支給される保険金は下記のとおりです。
損害賠償金 | 法律上の損害賠償責任を問われた際、損害賠償請求権者に対して支払うべき治療費や慰謝料などを補償する。 |
---|---|
損害防止費用 | 事故が発生した場合、損害の発生や損害拡大を防止するために発生した費用を補償する。 |
権利保全行使費用 | 発生した事故について、第三者に対して損害賠償を請求できる場合に、その権利を保全もしくは行使するために必要な費用を補償する。 |
緊急措置費用 | 事故が発生した場合、応急手当などの緊急措置に必要な費用を補償する。 |
協力費用 | 事故の解決にあたるため、保険契約者が引受保険会社へ協力するために必要な費用を補償する。 |
争訟費用 | 損害賠償に関して訴訟を起こす場合、争訟に必要な訴訟費用や弁護士報酬等の費用を補償する。 |
グッド保険サービス「イベント賠償責任保険」
http://www.goodhoken.co.jp/event-baiseki/
この他にも特約を付ければ、食中毒が起きた際の補償や、イベントのために借りた施設を誤って損壊した場合の補償などがあります。
レクリエーション保険は学校・社内イベントなどに適している
ここまで解説してきたとおり、不特定多数の参加者がいるイベントに備えるには、イベント賠償責任保険がおすすめ。
レクリエーション保険では、不特定多数の方を相手にするイベントには向いていません。
レクリエーション保険を利用する場合には、学校や社内イベントなど、参加する人数や名前があらかじめ分かっている場合が良いです。
レクリエーション保険が向いている行事・イベント
- 学校の遠足や校外学習、マラソン大会、校内スポーツ大会など
- 会社の定期的な行事(避難訓練、ゴルフコンペなど)
- 大学生・社会人サークルで行う行事・イベント(日帰りキャンプなど)
- 地域で定期的に開催している行事・イベント(子ども会など)
参加自由形の大規模なイベント・行事では不特定多数のお客さんが来てしまうため、レクリエーション保険ではなくイベント賠償責任保険を利用しましょう。
その際には、名前は必要ないものの、入場・来場者の人数は必ず把握できるようにしておくことが重要です。
まとめ:来場者がわからない場合は賠償責任保険で備えよう
今回は、不特定多数の来場に備える際の保険について解説してきました。
レクリエーション保険では、契約する際に参加者の人数や名前を名簿にまとめる必要があるため、不特定多数の参加者が訪れるイベントには向いていません。
不特定多数が参加する際には、レクリエーション保険ではなくイベント賠償責任保険が有効です。イベント賠償責任保険も、入場・来場者の人数を把握できる必要がありますが、名前の情報はいらないため、受付等で人数のカウントをしておけば良いです。
イベント賠償責任保険は、主催者が負担する法律上の損害賠償責任を補償してくれます。そのため、イベント中に不特定多数の参加者がケガをして、主催者がその治療費を賠償責任として請求される場合など備えることが可能です。
特に不特定多数が参加するイベントや行事を開催する場合、子どもやお年寄りも来場する可能性があり、何らかの事故が起こる可能性は十分考えられます。
事前にしっかり備えるためにも、ぜひ保険加入を検討してみてください。
監修者のコメント
「参加人数」「参加者名」が分かっているレクリエーションを実施する場合でも「レクリエーション保険」に重ねて、主催者が負担する損害賠償責任を補償する「イベント賠償責任保険」にも契約することをおススメします。また、学園祭等に来場した不特定多数のお客様の食中毒等を補償するには、生産物賠償責任保険の契約が別途必要なケースもありますのでご注意ください。
当記事の監修者:遠山直孝
- 保険コンプライアンス・オフィサー2級
- ファイナンシャルプランナー(AFP)
- 損保大学(法律・税務)※
国立大学卒業後、大手保険会社に27年勤務し、現在は損害保険代理店に所属。営業、企画部門での多彩な経験から、法律・税務を踏まえた実用的な保険の活用に精通しており、日々情報を発信しています。
※損保大学とは、損害保険の募集に関する知識・業務を向上させるために日本損害保険協会が立ち上げた制度。当監修者は「法律・税務」などの知識を深める専門コースを修めています。