レクリエーション保険は、1日単位で加入できる手軽さが魅力の団体向け傷害保険です。
イベントや行事中の事故によって参加者がケガをした場合に備えることができます。
しかし、補償内容や契約の際の注意点を理解していないと、十分な補償を得られない可能性もあります。
この記事では、レクリエーション保険の基本的な補償内容から、1日単位での契約の際に押さえておくべきポイントまで詳しく解説します。
レクリエーション保険はイベント・行事の「1日」を補償可能
レクリエーション保険は、団体で行うスポーツ活動やレクリエーションイベントなど、1日単位の行事を対象とした傷害保険の一種です。
イベント当日に参加者が事故でケガをした場合、主催者が法律上の賠償責任を負った場合などに保険金が支払われます。
多くのレクリエーション保険は、1日あたりの参加者が20名以上の団体を対象としていますが、中には10名以上から加入できる商品もあります。
契約者は主催者で、参加者全員を包括して契約するため、参加者個人が保険に加入する必要はありません。
なお、保険金額や補償内容は保険会社や商品によって異なるため、イベントの規模や内容に合わせて適切な保険を選ぶ必要があります。
対象となるイベントや行事の種類
レクリエーション保険の対象となるイベントや行事は多岐にわたりますが、主催者が参加者の安全管理に責任を負う団体活動が主な対象となります。
ただし、保険会社によって対象となる行事の範囲や区分けが異なるため、契約前に必ず確認が必要です。
以下に、代表的な保険会社の例を参考に、レクリエーション保険の対象となるイベントや行事の種類を危険度別に紹介します。
1. 比較的危険度の低い行事(レクリエーション)
- 集会、講演会、説明会、ミーティング
- 展示会、コンサート、映画鑑賞会
- バスハイク、ハイキング、自然観察
- 運動会、ラジオ体操、ウォーキング
- ゲートボール、グラウンド・ゴルフ、パークゴルフ
- 料理教室、手芸教室、絵画教室
- お花見、盆踊り、カラオケ大会
2. 中程度の危険度の行事(スポーツ)
- 野球(準硬式、軟式)、ソフトボール
- バレーボール、バスケットボール、サッカー
- テニス、バドミントン、卓球
- ボウリング、スケート、水泳
- ジョギング、マラソン、ロードレース
- 乗馬(ポニー)、サイクリング
- なぎなた、弓道、アーチェリー
3. 比較的危険度の高い行事(スポーツ)
- 野球(硬式)、ラグビー、アメリカンフットボール
- レスリング、ボクシング、空手、柔道
- ホッケー、ラクロス、アイスホッケー
- ハンググライダー、パラグライダー
- スカイダイビング、スキューバダイビング
- オートバイ・自動車レース
ただし、上記はあくまで一般的な区分であり、保険会社や商品によって異なる場合があります。
また、上記の行事であっても、プロスポーツや競技会など、特に危険度の高いものはレクリエーション保険の対象外となる場合があります。
対象となる行事やスポーツの種類だけでなく、参加者の年齢制限や参加人数の条件、行事の開催場所や期間なども保険会社によって異なるため、契約前に詳細を確認することが重要です。
レクリエーション保険の基本の補償内容
レクリエーション保険の基本的な補償内容は、大きく分けて「傷害保険」と「賠償責任保険」の2つがあります。
それぞれの補償内容を詳しく見ていきましょう。
※補償内容の詳細は保険会社によって異なります。契約前に必ずご確認ください。
1. 傷害保険:参加者のケガや死亡に対する補償
傷害保険では、イベント中の事故によって参加者がケガをしたり、亡くなったりした場合に保険金が支払われます。
主な補償内容は以下の通りです。
- 死亡・後遺障害保険金:事故によって亡くなった場合や、後遺障害が残った場合に支払われます。
- 入院保険金:ケガで入院した場合、入院日数に応じて日額が支払われます。
- 手術保険金:ケガの治療で手術を受けた場合に、手術の種類に応じて入院保険金日額の10倍が支払われます。
- 通院保険金:ケガで通院した場合、通院日数に応じて日額が支払われます。
保険金額は、契約時に設定した金額が上限となります。
2. 賠償責任保険:主催者や参加者の賠償責任に対する補償
レクリエーション保険の基本補償は「傷害保険」の範囲ですが、賠償責任保険を付帯できる商品もあります。
賠償責任保険では、イベント中に主催者や参加者が第三者にケガをさせたり、物を壊したりして、法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われます。
主な補償内容は以下の通りです。
- 損害賠償金:被害者に対して支払う治療費や休業補償、修理費など。
- 訴訟費用:訴訟になった場合の弁護士費用や訴訟費用など。
- 損害防止費用:事故の拡大を防ぐために必要な応急手当費用など。
賠償責任保険の補償額は、1事故あたりの支払限度額が設定されています。
3. 特約で補償を拡大
基本補償に加えて、特約をオプションとして付帯することで、補償内容を拡大することができます。主な特約は以下の通りです。
- 熱中症危険補償特約:熱中症になった場合の治療費や死亡・後遺障害保険金を補償。
- 食中毒補償特約:食中毒になった場合の治療費や死亡・後遺障害保険金を補償。
- 天災危険補償特約:地震、噴火、津波などの天災によるケガを補償。
これらの特約は、保険会社や商品によって内容が異なるため、加入時に確認が必要です。
以上が、レクリエーション保険の基本的な補償内容です。
イベントの内容やリスクに合わせて、適切な補償を選択することが重要になります。
契約前に確認しておくべき注意点
レクリエーション保険は、イベントや行事を安全に運営するために欠かせないものですが、契約前に確認しておくべき注意点があります。
加入条件や契約方法、補償内容などを事前に把握しておかないと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もゼロではありません。
ここでは、レクリエーション保険の1日単位での契約をご検討中の方に向けて、特に注意すべきポイントを3つ紹介します。
1日あたりの参加者が20名以上など、加入条件がある
レクリエーション保険は団体向けの保険であるため、加入にはある程度の人数が必要です。
多くの保険会社では、1日あたりの参加者が20名以上という条件を設けています。
ただし、保険会社によっては10名以上から加入できる商品もあるので、参加人数が少ない場合は、そのイベントや行事の規模に合うレクリエーション保険を探してみることをおすすめします。
逆に、参加者が100名を超えるような大規模なイベントの場合、保険会社が引き受けを断ったり、追加の条件を付けたりする可能性があるので注意が必要です。
加入前に、参加予定人数を確認し、保険会社の条件に合致しているか確認しましょう。
複数日加入したい場合は年間包括契約も可能
レクリエーション保険は1日単位での契約が基本ですが、年間を通して複数回のイベントを予定している場合は、年間包括契約を利用することができます。
年間包括契約では、1年間に開催予定のイベントをまとめて保険会社に通知し、一括で契約します。
これにより、イベントごとに契約手続きを行う手間を省くことができます。
ただし、年間包括契約では保険料が高くなる傾向があるため、コストと手間のバランスを考えて選択する必要があります。
また、イベントの日程や内容に変更があった場合は、速やかに保険会社に連絡し、契約内容の変更手続きを行いましょう。
宿泊を伴うイベント・行事は契約不可
レクリエーション保険は、日帰りのイベントを対象としており、宿泊を伴う行事は補償の対象外となります。
これは、宿泊を伴う行事の場合、リスクが日帰りに比べて格段に高くなるためです。
宿泊を伴うイベントを予定している場合は、レクリエーション保険ではなく、国内旅行傷害保険など、宿泊を伴う行事に対応した保険を選ぶ必要があります。
ただし、国内旅行傷害保険は、レクリエーション保険に比べて保険料が高くなる傾向があるので、予算との兼ね合いを考えて選択しましょう。
また、海外での行事の場合は、海外旅行保険に加入する必要があります。
記事まとめ:イベント・行事の1日にしっかり備えよう
レクリエーション保険は、1日単位で手軽に加入できる団体向け傷害保険であり、イベントや行事中の事故によって参加者がケガをした場合に備えることができます。
基本的な補償内容は傷害保険と賠償責任保険の2つに分かれ、特約を付帯することで補償を拡大することも可能です。
ただし、加入条件や補償内容、契約方法には注意が必要です。
参加人数が20名以上であること、宿泊を伴う行事は契約不可であること、複数日の契約には年間包括契約が利用できることなど、契約前に確認しておくべきポイントを押さえておきましょう。
この記事を参考に、イベントや行事の安全運営に向けて、適切なレクリエーション保険を選択してください。
監修者のコメント
保険の契約手続きはできるだけ早めに完了させることをお勧めします。
記事にもある通り、「この保険に契約したい」と考えていても申込手続きをしてみたら、参加人数が保険契約の対象となる最低人数に足りない、行うイベントが引受の対象外(例えばケンカ祭りなど)ということがありえます。
そのような場合、保険会社や損害保険代理店に相談することで別の保険で対応できる場合があります。相談する時間を確保するためにも早めに手続きをしておきましょう。
当記事の監修者:遠山直孝
- 保険コンプライアンス・オフィサー2級
- ファイナンシャルプランナー(AFP)
- 損保大学(法律・税務)※
国立大学卒業後、大手保険会社に27年勤務し、現在は損害保険代理店に所属。営業、企画部門での多彩な経験から、法律・税務を踏まえた実用的な保険の活用に精通しており、日々情報を発信しています。
※損保大学とは、損害保険の募集に関する知識・業務を向上させるために日本損害保険協会が立ち上げた制度。当監修者は「法律・税務」などの知識を深める専門コースを修めています。