イベント中に突然竜巻が直撃したり、大粒の雹(ひょう)が降り出したりと、けが人が出てもおかしくない異常気象がしばしば発生します。
また大雨などによる水害も、その規模は大きくなっています。
イベントやレクリエーションの開催日にこのような異常気象に遭遇するのは避けたいものです。また、天候は開催中に突然変化することもあります。
そこで今回は、イベントやレクリエーションの数日前から当日にかけての、上手な気象情報の活用方法をご紹介します。
安全で充実したイベントの一助にお役立て下さい。
イベントと気象リスク
先日、徳島県の夏の風物詩として欠かせない「阿波踊り」の運営をめぐるドタバタ劇がありました*1。
台風7号が接近する中で開催するかどうかをめぐってギリギリまで検討が続いたのです。
台風接近はかなり前からわかっていたことですが、実行委員会はなかなか講演の開催・中止を決められずにいました。
台風がいよいよ迫った8月14日も開催を決行しましたが、同日、徳島市は高齢者などの避難が必要とされる避難情報を発令しています。
翌15日は全面中止とされたものの、避難情報が発令されるなかでのイベント決行はSNSでも話題になるなど、さまざまなリスクがあると言って良いでしょう。
風水害による保険金支払額は増加傾向
近年、災害、特に台風などの風の被害、そして大雨による水害では被害が頻発しています。
日本損害保険協会の調査によると、台風など風水災害での保険金の支払額は増加傾向にあります(図1)。
それくらい、風水害による被害は起きやすくなっているのです。
風水災害の規模が大型化していることも考えられます。
また、この夏、大型の雹(ひょう)が降る様子がSNSに多数投稿されました。
前橋市などでは7月末に大粒の雹(ひょう)が振り、住宅の窓ガラスが割れ、けが人も出ています*2。私たちがなんとなく知っている雹とは、様子が異なっているようです。
大規模化する自然災害は、イベントやレクリエーションをいつ襲ってもおかしくありません。
よって気候の変化にはこれまで以上に敏感になる必要があります。異常気象によるけがなどのリスクは高まっているのです。
そこで知っておきたいのが、気象庁などから発表される気象情報です。
気象庁等が発表する気象情報は多種類、数日前からも
気象庁が発表する情報でよく見聞きするものに、「大雨注意報」や「大雨警報」があります。
これらと同様に、気象庁は「気象情報」として、さまざまな現象についての情報を適宜発表しています。
災害に結びつくような激しい現象が発生する可能性を、数日前から知らせているものもあります。
気象情報には「大雨」「大雪」「暴風」「暴風雪」「高波」「低気圧」「雷」「降ひょう」「少雨」「長雨」「潮位」「強い冬型の気圧配置」「黄砂」など、現象の種類によって様々な種類があります。
また、「大雨と暴風」や「暴風と高波」、「雷と降ひょう」のように組み合わせて発表することもあります。
数日前から、また当日も時間ごとにこまめにリスクを把握できる情報ですので、主催者は積極的に活用したいところです。
また、各種警報の危険度の段階についても知っておきましょう。以下、現象別に解説していきます。
強風・暴風に関する情報
イベント中に竜巻に襲われテントなどが倒壊した、という事故がしばしば発生しています。SNSでその様子を投稿する人もいます。
竜巻を含めた強風に関しては、気象庁から数日~1日前に「暴風に関する気象情報」が発表されます。
その後も現象の推移に応じて、「強風注意報」「強風警報」が発表されます(図2)。
暴風に関する気象情報発表ののち、災害のおそれがある強風(東京都23区では13メートル/秒以上)になってきた場合は「強風注意報」が発表されます。
さらに時間が経過して重大な災害のおそれがある暴風(東京都23区では25メートル/秒以上)になりそうな場合は、その6~3時間前に「暴風警報」が発表されます。
このように、気象情報は時間を追って発生直前まで更新されていきます。大雨などの警報も同様です。
注意報や警報が発表された段階ではまだ風が強くなかったとしても、発表の段階で屋内に移動するなどの行動が必要です。
竜巻ナウキャスト、雹(ひょう)に関する情報
竜巻については、10分ごとに更新される「竜巻発生確度ナウキャスト」という情報が気象庁から発表されています。気象庁ホームページなどで入手できます*3。
日中の屋外イベントの場合、下のような情報活用を気象庁は求めています(図3)。
前日の天気予報で「雷を伴う」「大気の状態が不安定」「竜巻などの激しい突風」というワードが出てきた場合は、当日もリアルタイムで情報をチェックすることが重要になります。
また、雹(ひょう)に関連する情報も、気象庁のホームページで地方別に見ることができます*4。
大雨に関する情報
次に、大雨に関する情報です。
台風や線状降水帯の発生による水害は近年、頻繁に見られるようになりました。
屋外でのイベントやレクリエーションの場合は、天気予報をもとにあらかじめ中止を決定しやすいことと思いますが、屋内での開催こそ大雨に関する情報には警戒したいところです。
降り始めにはそう意識していなくても、近年は短時間のうちに災害に発展する事例も見受けられるからです。
また、大雨や洪水被害が出た時、逃げ遅れはが生じる恐れもあります。
大丈夫だと思いイベントを進めていたところ、解散時には水害に発展し帰宅困難者を生む、ということにならないよう努める必要があります。
大雨や洪水・高潮警報については警戒レベルとそれに応じた対応を知っておかなければなりません。
大雨や洪水について、気象庁は5段階の情報発信をしています。令和3年5月20日からは、それぞれの段階に応じた情報と取るべき行動を次のように定めています(図4)。
雨天決行で開催するイベントやレクリエーションの場合、雨雲レーダーのチェックもそうですが、急に雨足が強まってきた場合の対応について想定しておく必要があります。
上の図では、最上級の避難情報は「緊急安全確保」ですが、これは「すでに安全な避難ができず命が危険な状況」つまり避難のために外に出る方が危険なのでその場でできる限りのことをしてほしい、という意味です。
この認識はまだじゅうぶんに広まっていないと感じます。
「注意報」の段階からじゅうぶん警戒し、イベントやレクリエーションの中断も視野に入れるようにしましょう。
「今は大丈夫だから」というのではなく、参加者が帰宅にかかる時間も加味して判断することが重要です。参加者が無事に自宅に戻れるのは大切なことです。
各種警報の発令基準と便利な情報源
ここまでイベントに関連する気象情報についての注意をまとめてきました。
なお、気象庁は「特別警報」の発表基準を下のように定めています(図5)。
「数十年に一度」という言葉はもう聞き飽きた、という方もいらっしゃることでしょう。
しかし、こうした特別警報が発表された時に、本当に想像以上の災害が起きていることも事実です。
今の日本には常に「被災地」がどこかにあり、復旧しきれないうちに次の災害が発生しているため、報道機関もすべてをカバーできないのが現状と言っていいでしょう。
自分たちで安全を守るという意識が欠かせない時代にきています。
なお、気象庁は、各地に発表されている各種注意報や警報、アラートを確認できるサイトを作っています(図6)。
地図を拡大して地域や都道府県をクリックすると、発令されている警報や注意報の詳細な一覧を参照できます。
また、画面左上の「気象警報・注意報」タブをクリックすると、警報や注意報の種類ごとに対象地域を見ることもできます(図7)。
どのような気象現象がいつ襲ってくるか予測のつかない時代になってきました。
イベントやレクリエーションを心から楽しめるものにするためにも、事前だけでなく開催中も気象情報をこまめにチェックするようにしましょう。
資料一覧
- *1
「徳島・阿波踊り、最終日の15日は全公演中止 台風7号で」日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC154810V10C23A8000000/ - *2
「猛暑の群馬で「ひょう」が降り4人けが、窓ガラス割れる…突風でトタンが飛ぶ被害も」読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230731-OYT1T50200/ - *3
「竜巻注意情報・竜巻発生確度ナウキャスト」気象庁
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/tatsumaki.html - *4
「ひょうに関連のある情報」気象庁
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/nougyou/hyou.html
清水 沙矢香
- フリーランスライター
- 京都大学理学部卒
- 元TBS報道記者
2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。