興行中止保険とは、悪天候や交通機関のマヒ等によるイベントの中止・延期に備えるためのイベント保険の一種です。
この記事では、イベント保険に含まれる興行中止保険の特徴と補償内容・契約時の確認事項等を解説しています。
関連するイベント保険の概要もまとめているので、イベント主催者・責任者の方はぜひ参考にしてみてください。
イベント保険の1つ「興行中止保険」とは
興行中止保険は、主催するイベント・レクリエーションが何らかの理由で中止・延期となった場合に、準備等にかかった費用の補償を受けることができるイベント保険です。
まずは、イベント保険の興行中止保険で補償される主な費用項目と、補償対象となるイベントや損害の種類について詳しく見ていきましょう。
興行中止保険の主な補償内容
イベント保険の興行中止保険で補償される主な費用項目は以下の通りです。
概要 | 具体的な費用項目例 | |
---|---|---|
中止費用 | イベントの準備にかかった費用 | 出演料・会場使用料・会場設営費・スタッフにかかる費用(雇用費・交通費・食費・宿泊費等)・警備費・広告宣伝費 等 |
追加費用 | イベントの延期または中止に伴い、追加で生じた費用 | チケットの払い戻しにかかる手数料・中止広告費 等 |
なお、補償範囲に含める費用項目とその金額・支払限度額等については契約時に個別に設定する形となります。
イベントの中止・延期によって上記のような損害が出た場合でも、契約内容に含まれていない費用項目は補償対象から外れる点に注意しましょう。
補償対象となるイベント・損害
興行中止保険の対象となる行事・イベントには以下のようなものが挙げられます。
一方、例えばディーラーの展示即売会・新車発表会や学習塾の夏季スクール、建設工事等のように、イベント性がなく通常業務との区別が難しいケースでは、イベント保険を利用することができません。
また興行中止保険による補償を受けられるケースとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 台風・大雨・積雪等の悪天候
- 雪不足による開催不能
- 交通機関の不通
- 出演者のキャンセル 等
このように、興行中止保険は「不測かつ突発的な事由」によってイベント開催が中止・延期となった場合に補償を受けられるイベント保険です。
契約内容は細かくカスタマイズできる商品がほとんどですので、屋内であれば交通機関の事故や出演キャンセル、屋外の場合は更に悪天候による中止・延期の損害が補償されるように契約すると安心です。
イベント保険の契約時に確認したいこと・注意点
続いて、イベント保険の興行中止保険を契約する際に確認すべきポイント・注意点を見ていきましょう。
興行中止保険の保険料は?
イベント保険の興行中止保険では、次の計算式で算出される金額が保険金額(支払限度額)の範囲内で支払われる仕組みとなっています。
{(準備費用+追加費用)-(収入+免責金額)}×縮小支払割合(70~100%)
突発的な事由によってイベント開催を中止した場合でも、それまでに収入があり、費用の一部を回収できているというケースでは、損害費用の総額から収入分が差し引かれることになります。
また契約時に設定した免責金額(=自己負担額)や縮小支払割合(=保険会社のリスク負担割合)分も差し引かれるため、最終的に受け取れる金額を踏まえて契約内容を検討することが大切です。
実際にイベント保険の興行中止保険を利用した場合の保険料・保険金額の事例を紹介します。
屋外コンサートの例 | 地域のお祭りの例 | |
---|---|---|
開催場所 | 都心部の野球場 | 都心部の公園 |
開催時期 | 5月上旬(1日間) | 8月下旬(2日間) |
支払いの対象となる事由 | 不測かつ突発的な事由による中止(出演者の出演不能リスク補償あり) | 台風や大雨等の悪天候による中止 |
支払いの対象となる損害 | 出演料・会場設営費・プログラム/ポスター/チラシ/チケット印刷費 等 | 会場設営費・ポスター印刷費・機材運搬費・食材費 等 |
規模 | 4,000万円 | 100万円 |
保険料 | 約140円 | 約10万円 |
縮小支払割合 | 90% | 100% |
保険金額(支払限度額) | 3,600万円 | 100万円 |
イベント当日でも加入できる?
興行中止保険は個別に契約内容を設定する“オーダーメイド型”のイベント保険であるため、加入前に補償範囲の設定や保険料の算出等が必要となります。
イベント開催の当日・前日になってからでは加入できないケースがほとんどですので、1ヶ月程度前もって問い合わせを行うようにしましょう。
【要確認】保険金の支払いが行われないケース
イベント保険の興行中止保険に加入していても、以下のようなケースでは保険金を受け取ることができません。
- イベント関係者の故意による中止・延期
- 重過失または法令違反による中止・延期
- イベント関係者の解散・破産・資金不足による中止・延期
- 売上不足・顧客不足等による中止・延期
- イベント関係者の犯罪行為・闘争行為・逮捕・出入国拒否、・権力の行使による中止・延期
- 被保険者が常時使用または管理する施設の滅失・損傷または汚損
- 政変・国交断絶・国家的服喪・経済恐慌・物価騰貴・外国為替市場の混乱・通貨不安等による中止・延期
- 戦争・暴動・地震・噴火・津波等による中止・延期
- 重症急性呼吸器症候群・鳥インフルエンザ・新型インフルエンザ等の感染症の発生に起因する損害 等
また以下の理由によって出演者の登壇が不能となった場合も補償の対象外となります。
- 保険契約の締結前にすでに被っていた身体障害による出演不能
- 既住1年以内に治療を受けたことがある身体障害の再発
- 心因性の神経症
- 麻薬その他服用が禁止されている薬物や興奮剤の服用
- 飲酒・気まぐれ・自傷・自殺・闘争行為による身体障害
- 妊娠・出産・流産・早産・生理またはこれらの事由に起因する疾病 等
新型コロナウイルスによる中止・延期は補償される?
近年は新型コロナウイルスの感染拡大によってイベント開催が中止・延期となるケースも珍しくありませんが、現状、新型コロナウイルスはイベント保険の補償対象外となる商品がほとんどです。(2022年11月現在)
感染症に関する特約を付帯することで対応できるケースもありますが、基本的に新型コロナに起因するイベント中止は補償されないという点を理解しておく必要があります。
合わせて加入を検討したい関連保険
主催者・責任者としてイベントを開催する際は、興行中止保険と合わせて以下のイベント保険も利用を検討してみましょう。
概要 | |
---|---|
傷害保険 | 観客が将棋倒しになる等、イベント中にケガ・死亡事故が生じた場合に補償を受けられる |
施設賠償責任保険 | 設営していたテントが倒れてケガ人が出た場合等、主催者側の不備で参加者が被害を被った・モノを破損させた場合に補償を受けられる |
動産総合保険 | 展示品の焼失や運搬中の破損等、イベントに使用する展示品・機器が破損した場合に補償を受けられる |
これらのイベント保険を組み合わせることで、イベントの中止・延期に伴う損害だけでなく、参加者のケガや機材の破損による賠償金等も補償範囲に含められるようになります。
大規模なイベントになるほど想定されるリスクも大きくなるため、イベント保険等でしっかりと備えておくことが大切です。
興行中止保険の概要と契約時の注意点まとめ
- 興行中止保険とは、“不測かつ突発的な事由”でイベントが中止・延期となった場合の損害を補償できるイベント保険のこと
- 補償範囲を個別に設定するオーダーメイド型のイベント保険で、事前に指定した準備費用や追加費用に対する補償が受けられる
- 新型コロナウイルスをはじめ、イベント中止の事由によっては補償を受けられないケースもある
イベント保険は手頃な価格で最短1日から加入できる便利な保険商品です。
イベントの大小に関わらず、団体行事を主催する際はイベント保険へ加入することをおすすめします。