「イベントで食中毒が出たらどうしよう?」
「多額の損害賠償を請求されるのがこわい?」
開催届出や食品衛生の届出など、各種手続きから当日の運営まで、1日のイベント主催には様々な責任が伴います。
イベントでの食中毒事故は、一度発生すると主催者側に多額の賠償責任が生じます。損害賠償金の支払いが経営を圧迫し、企業の評判を大きく損なう場合もあります。
そのため、1日限りの開催期間の短いイベントであっても、食中毒のリスク対策について詳しく知っておくことが大切です。
この記事では、以下の内容を紹介します。
この記事で分かること
- 飲食イベント開催中に起こるリスクの具体例
- 食中毒に対応できるイベント保険の選び方
- イベント保険に加入する際の注意点
この記事を読むことで、イベントでの食中毒リスクとイベント保険の仕組みについて詳しく知ることができます。
イベントでの食中毒対策と保険の知識を身につけることで、イベント開催時の万が一に備えましょう。
飲食イベントの主催者が知っておきたい事故リスク
1日にわたって行われる飲食イベントでは、飲食店のように環境が整っていない場合が多いため、食中毒のリスクが高まる可能性があります。
飲食イベントでは、食材の保管場所や調理器具の衛生管理など、食中毒を予防するための設備や体制が十分でない場合が多いです。
そのため、食材が常温で長時間放置されたり、再加熱が不十分なまま提供されたりする危険性があります。
また、調理器具の消毒が不十分であったり、スタッフの手洗いが徹底されていなかったりするケースも見られます。
このような状況では、食中毒の原因となる細菌が増殖しやすくなり、参加者が食中毒になるリスクが高まります。
イベント主催者は参加者の安全を守るために、食中毒の発生原因を理解し、適切な対策を講じる必要があります。
イベントで食中毒が発生した実例
ここでは、イベントで実際に発生した食中毒の例をいくつか紹介します。
- 冷やしキュウリでの食中毒(腸管出血性大腸菌)
- 鶏肉の寿司での食中毒(カンピロバクター)
- 餅つき大会での食中毒(ノロウイルス)
- サンドパンでの食中毒(ウェルシュ菌)
一体どのような状況で食中毒が発生するのかを知ることで、イベント開催時に予防しやすくなります。
ここからは、それぞれの食中毒が発生した状況やその原因を詳しく見ていきましょう。
冷やしキュウリでの食中毒(腸管出血性大腸菌)
平成26年7月、静岡県の花火大会の屋台で提供された冷やしキュウリを食べた510人が食中毒を発症し、うち114人が入院するという事件が起こりました。
原因は、腸管出血性大腸菌によるものとみられます。
給水設備のない仮設施設で、キュウリの漬け込みや串刺しなど複数の調理工程を行っていたため、十分な洗浄や衛生管理ができなかったことが原因と考えられています。
被害の深刻さから被害者は損害賠償を請求し、静岡地裁は露店商に対して1,167万円の賠償を命じました。
鶏肉の寿司での食中毒(カンピロバクター)
平成28年4月、福岡県と東京都の肉フェスで、同じ業者が提供した鶏肉の寿司を食べた人が、福岡県で266人、東京都で609人、下痢や腹痛などを発症しました。
原因は、鶏肉を軽く湯通ししただけで、加熱が不十分なまま提供されていたことです。
生肉を扱う場合、中心部までしっかりと加熱しないと、食中毒が発生するリスクが高くなることが分かります。
餅つき大会での食中毒(ノロウイルス)
平成30年12月、東京都の小学校でノロウイルスによる食中毒が発生。餅つき大会で、餅を食べた143人が嘔吐や下痢などを発症しました。
手指消毒が不十分だったうえ、食品や器具の取り扱いが不適切だったことが原因でした。餅つき大会やお祭りなどでは、手を洗わずに餅を丸めることで同様の食中毒が発生しています。
餅つき大会のようなイベントでは、調理前やトイレの後に石鹸で手を洗うなど、徹底した衛生管理が必要です。
ノロウイルスにはアルコール消毒は効果がないため、必ず石鹸を使用しましょう。
サンドパンでの食中毒(ウェルシュ菌)
イベントでサンドパンを食べた4人が腹痛や下痢、嘔吐などの症状を訴えました。調査の結果、患者とサンドパンから同じ型のウェルシュ菌が検出されたため、これが食中毒の原因であると特定されました。
サンドパンに使用したミートソースを調理後に常温放置したことが原因と考えられます。
ウェルシュ菌は熱に強い芽胞を形成するため、調理後も常温で放置すると芽胞から菌が増殖し、食中毒を引き起こす可能性があります。
バザーなどのイベントは調理から提供までの時間が長くなるため、特に注意が必要です。
食品は調理後、速やかに10℃以下または65℃以上で保存します。前日の調理や長時間の常温放置は避けましょう。
※参照 イベント・臨時店舗等で発生した食中毒事件 | 広島市保健所 食品保健課
https://www.city.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/223619.pdf
【1日だけ加入】食中毒をカバーするイベント保険の基本補償とは?
食品を提供する環境を整えることで、食中毒の発生確率を下げることは可能ですが、残念ながら完全になくすことはできません。
そこで、イベント開催時には、万が一の事態に備えて食中毒対応のイベント保険に加入するのが一般的な対策となっています。
ここでは、食中毒を含む、イベントで発生した事故による損害賠償に備える、イベント賠償責任保険の仕組みと補償内容を解説します。
イベント賠償責任保険の基本補償
イベント賠償責任保険は、イベント開催中に発生した事故で、主催者が法律上の責任を負う場合に備える保険です。
加入することで、 参加者や観客の怪我による損害賠償請求、持ち物の破損など、様々な事故に対して補償を受けることができます。
参加者や観客の怪我による損害賠償請求、持ち物の破損など、様々な事故に対応します。
補償される金額は、保険会社やプランによって異なります。例えば、1億円まで補償されるプランや、事故の内容に応じて補償金額が変動するプランなどがあります。
具体的には、例えばこんな事故が補償対象となります。
- 会場設営の不備で看板が落下し、来場者が怪我をしてしまった。
- 案内係の誘導ミスで観客が転倒してしまった。
- 展示品の説明中に誤って商品を落とし、来場者の持ち物を壊してしまった。
そして、対象となる主なイベントは以下の通りです。
- 祭り・神輿渡御・盆踊り
- 展示会・物産展・フリーマーケット
- コンサート・演奏会・ダンス発表会
- マラソン大会・運動会
- 講演会・式典
イベント賠償責任保険は、イベント主催者が安心してイベントを開催するためにぜひ検討したい保険です。
万が一事故が発生した場合でも、この保険に加入していれば、経済的な負担を軽減することができます。
1日のイベントでも、大きな事故が起こる可能性はあります。安心してイベントを楽しむためにも、イベント賠償責任保険への加入を検討するとよいでしょう。
食中毒の補償を受けるには特約加入が必要
イベント賠償責任保険の基本補償では、食中毒は補償の対象外となる場合が多いです。
そのため、安心してイベントを開催するためには、食中毒に対応する特約への加入を検討しましょう。
特約に加入することで、万が一食中毒が発生した場合でも、医療費や賠償金などの負担を軽減することができます。
補償額は保険会社やプランによって異なりますが、一般的には、怪我や病気に対する補償額と同程度、もしくはそれ以下の範囲で設定されています。
とくに食中毒のリスクが高いイベントを開催する際には、特約に加入することで、より安心してイベントを開催できるでしょう。
【食中毒もカバー】費用を抑えるなら「レクリエーション保険」という選択肢も【1日加入もOK】
食中毒をカバーできるイベント用の保険は、イベント保険だけではありません。レクリエーション保険という選択肢があり、1日からの加入が可能です。
ここでは、レクリエーション保険について詳しく見ていきましょう。
レクリエーション保険とは
レクリエーション保険とは、イベントや行事中の事故で、参加者がケガをしてしまった場合に備える保険です。20人以上が参加するイベントで加入することができます。
イベント保険では参加人数に関係なく保険料が一定ですが、レクリエーション保険では参加者の人数に応じて保険料が算出されるという特徴があります。
人数が少なめの1日制イベントなら、レクリエーション保険はイベント保険よりも費用が安い
レクリエーション保険は、イベント保険と比べて加入費用を抑えられながらも、必要な補償を確保できます。
不特定多数を補償対象とするイベント保険では、保険料が数万円~数十万円になることも珍しくありません。一方、レクリエーション保険は参加者一人あたり25円~350円程度の支払いで加入できます。
例えば、30人程度の1日のイベントの場合、保険料は以下のようになります。
- イベント保険
数万円の保険料が必要となる - レクリエーション保険
5,000円~10,000円程度で済む
このように、人数が少なめのイベントであれば、レクリエーション保険の方が費用面で有利です。
特に、1日のみのイベントであれば、レクリエーション保険で十分な補償を受けることができます。
さらに、標準でケガなどの補償に加え、特約に加入すれば食中毒も補償対象にできます。そのため、食事を提供するイベントでも安心して運営できます。
レクリエーション保険は、人数の少ない1日制のイベントにおいて、費用を抑えつつ、必要な補償を確保できるという点で優れた選択肢といえます。
【注意】名簿の届出が必要のため不特定多数が参加するイベントは不向き
イベント保険よりもリーズナブルに、ケガや食中毒のリスクに備えられる場合が多いのが、レクリエーション保険の魅力です。
しかし、参加者名簿の届出が必要となるため、不特定多数が参加するイベントには向いていません。
例えば、町内会のお祭りやマルシェなどのように、参加者を事前に特定できないイベントでは、レクリエーション保険への加入は難しいです。
当日参加を受け付けるイベントの場合、参加者の追加や変更に対応しきれず、保険金が支払われない可能性もあります。
そのため、レクリエーション保険への加入を検討する際は、イベントの参加者を事前に把握し、加入前に名簿を届出できるかどうかを確認することが重要です。
レクリエーション保険についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
-
レクリエーション保険とは?補償内容から保険料、加入の注意点を解説!
子ども会のイベントや社内行事、大人数で行うレジャーなど、イベント時に参加者がケガをしてしまった場合には、治療費がかかり参加者に負担が発生する可能性があります。 もし主催者側の過失で参加者がケガをした場 ...
1日から入れるイベント保険についてのまとめ
イベントでの食中毒事故は、一度起きると大きな問題になる可能性があります。
適切な補償内容のイベント保険に加入することで、主催者も参加者も安心してイベントを楽しむことができます。
そのため、1日限りのイベントでも適切な保険に加入して、しっかりと備えておくことが大切です。
さらに、イベント保険に食中毒に対応した特約を付帯することで、食中毒発生による賠償責任リスクを軽減することができます。
また、参加者が20人以上で参加者名簿の届出が可能な場合は、費用を抑えられるレクリエーション保険という選択肢もあります。
万が一の場合に備えて保険に加入することで、主催者の方も参加者の方も安心してイベントを楽しむことができます。
この記事を参考に、イベントの内容や規模に合わせて、最適な保険を選ぶようにしましょう。