団体でのスポーツ活動には思わぬ事故がつきものです。
そんなとき、スポーツ安全保険やレクリエーション傷害保険などのスポーツ保険があれば、ケガの治療費から賠償責任まで、さまざまなリスクに備えることができます。
しかし、「加入手続きはどうするの?」「補償内容は何が違うの?」「事故が起きたときの手続きは?」といった使い方の疑問を持つ方も多いはず。
そこでこの記事では、団体でのスポーツ保険の加入方法から補償内容、事故発生時の具体的な対応まで、実践的な使い方を解説します。
スポーツ保険の加入対象と契約の手続き
スポーツ保険を団体で活用する際、まず最初に確認すべきなのは加入対象と契約手続きです。
どのような団体が加入でき、どのような手順で契約するのか、保険の種類によって異なります。
代表的なスポーツ安全保険とレクリエーション傷害保険では、加入できる団体の規模や申し込み方法が異なるため、自分たちの団体に適したスポーツ保険を選ぶことが重要です。
ここでは、各保険の加入対象となる団体の条件や、インターネットでの申し込み方法など、具体的な契約手続きについて解説します。
スポーツ安全保険
スポーツ安全保険は、4名以上のアマチュアの団体・グループであれば加入することができます。
対象となる団体は、スポーツ少年団、野球チーム、ママさんバレーチーム、総合型地域スポーツクラブ、企業のクラブ活動、各種同好会など。
加入手続きは、インターネットを通じて行います。
スポーツ安全協会のホームページ「スポあんねっと」で必要事項を登録し、コンビニエンスストアまたはPay-easyにて掛金を振り込むことで加入手続きが完了します。
レクリエーション傷害保険
レクリエーション傷害保険は、20名以上の団体を対象としている団体向けのスポーツ保険です。
ただし、AIG損保のレクリエーション傷害保険など、比較的小規模な10人の団体から契約可能な場合もあります。
具体的な加入手続きは保険会社によって異なりますが、インターネットでの申込みが可能な商品もあります。
例えば、あいおいニッセイ同和損保の「ネットで簡単!レクリエーション傷害保険」では、パソコンやスマホから申込可能で、行事開催日の前日23時59分まで加入申込みが可能です。
スポーツ保険の一般的な補償内容
スポーツ保険を効果的に活用するには、補償内容を正しく理解することが不可欠です。
どのような事故やケガが保障されるのか、保険金はどの程度支払われるのかを把握しておくことで、団体でのスポーツ活動中の万が一の事態に適切に対応できます。
スポーツ安全保険とレクリエーション傷害保険は、基本的な補償項目である傷害補償は共通しており、これにプラスでそれぞれ特徴的な補償があります。
まずは、傷害に関する保険金の種類を表にまとめたのでご覧ください。
保険金 | 補償内容 |
---|---|
死亡保険金 | 事故の日から180日以内に死亡した場合、死亡・後遺障害保険金額の全額が支払われる |
後遺障害保険金 | 事故の日から180日以内に後遺障害が生じた場合、その程度に応じて死亡・後遺障害保険金額の4%~100%が支払われる |
入院保険金 | 事故によるケガの治療のため入院した場合、入院1日につき入院保険金日額が支払われる。通常、1日目から補償されます。 |
手術保険金 | 事故によるケガの治療のため所定の手術を受けた場合、入院保険金日額の10倍(入院中の手術)または5倍(入院中以外の手術)が支払われる。 |
通院保険金 | 事故によるケガの治療のため通院した場合、通院1日につき通院保険金日額が支払われる。通常、1日目から補償され、90日が限度です。 |
スポーツ安全保険では、上記の傷害保険の範囲に加えて、対人・対物事故により負った法律上の賠償責任を補償する賠償責任保険も含まれます。
また団体活動中および往復中にメンバーが突然死した場合、被保険者の親族が負担した葬祭費用を180万円を限度に実費で補償する突然死葬祭費用保険がついているのもスポーツ安全保険の特徴です。
なお、レクリエーション傷害保険でも保険商品によっては賠償責任保険が含まれている場合や、特約の付帯によって熱中症・食中毒が補償対象となる場合があります。
必要な補償範囲と期間から使い方を考える
スポーツ安全保険は、団体活動中の事故はもちろん、集合場所や解散場所と自宅の往復中の事故も補償の対象です。
一方、レクリエーション傷害保険は主に日帰りの行事が対象となります。
保険期間も異なり、スポーツ安全保険は4月1日から翌年3月31日までの1年間、レクリエーション傷害保険は1日単位で加入できます。
定期的に活動する団体ならスポーツ安全保険、単発のイベントを開く団体ならレクリエーション傷害保険というように、活動の形態に合わせて選びましょう。
新メンバー加入時の追加手続き方法
スポーツ安全保険なら、年度の途中でも新しいメンバーを追加できます。
「スポあんネット」で手続きができ、1名からでも受け付けてもらえます。
レクリエーション傷害保険の場合は、スポーツイベントごとの加入なので、新しいメンバーが参加するイベントの際に一緒に手続きをすれば大丈夫です。
実際に保険を使う!保険金を請求する方法
スポーツ活動中の事故やケガは、いつ起きるか分かりません。
そんな突然の事故に備えて、保険金の請求方法をあらかじめ知っておくことが大切です。
手続きは難しそうに思えますが、順序立てて進めれば心配ありません。
事故発生時の連絡から保険金が支払われるまで、スポーツ保険における保険金請求の具体的な流れを確認していきましょう。
事故発生時の具体的な手続きの流れ
事故が起きたらすぐに保険会社に連絡しましょう。
その後、スポーツ安全保険なら、東京海上日動から保険金の請求書が送られてきます。
レクリエーション傷害保険は、各保険会社が指定する方法(電話やインターネット、LINEなど)で事故の報告をします。
その後、必要な書類を提出すれば、保険会社が内容を確認して保険金が支払われます。
請求に必要な書類や証明書の準備方法
保険金を請求するときに必要な書類は、保険の種類や事故の内容によって違いますが、一般的に以下のようなものが必要です。
- 保険金請求書
- 事故証明書(団体の代表者に記入してもらいます)
- 医師の診断書(ただし、入通院保険金の請求額が合計30万円以下なら基本的に不要です)
- 治療費の領収書
- その他、保険会社から指定された書類
保険金請求の期限や注意点
保険金は事故が起きた日の翌日から3年以内に請求する必要があります。
この期限を過ぎてしまうと請求できなくなってしまうので注意が必要です。
3年以内であれば請求できますが、なるべく早めに手続きを済ませましょう。
手続きが遅れると、保険金の支払いまでに時間がかかることがあります。
なお、スポーツ保険の説明でよく出てくる「180日以内」という期間は、治療期間や通院・入院の補償対象期間のことで、請求期限とは別のものです。
事故が起きたら、まずは早めに保険会社に相談するのがおすすめです。
スポーツ保険の賢い使い方
団体でスポーツ保険を最大限活用するには、加入手続きや補償内容を理解するだけでなく、自分たちの団体に最適な保険の選び方や活用方法を知ることが重要です。
団体の規模、活動内容、活動頻度によって最適なスポーツ保険は異なり、また補償範囲の確認や追加特約の検討なども必要になってきます。
ここからは、スポーツ保険をより効果的に活用するための具体的なポイントについて、団体の特性に応じた選択方法から、見落としがちな確認事項まで解説していきます。
団体の規模や活動内容に合わせた保険選択
スポーツ保険は、団体の規模や活動内容によって最適なプランが変わってきます。
メンバーや参加者の人数、またスポーツ活動の特性に応じて、以下のような選び方がおすすめです。
団体規模 | おすすめスポーツ保険プラン | 特徴 |
---|---|---|
小規模団体 (4〜9名程度) |
スポーツ安全保険のAプランやCプラン | 比較的安い掛金で基本的な補償が受けられます。 |
中規模団体 (10〜44名程度) |
スポーツ安全保険のBプランやDプランまたはレクリエーション傷害保険(20名以上の単発イベント向け)もおすすめ | 掛金は少し高めですが、より手厚い補償が受けられます。 |
大規模団体 (45名以上) |
東京海上日動のレクリエーション災害補償プランなど | 団体割引が使える場合も多く、費用を抑えられます。 |
活動実態に合わせた補償範囲の確認
スポーツ保険に加入する前に、自分たちの活動形態に合った補償が揃っているか、以下のポイントをチェックしましょう。
項目 | 確認ポイント |
---|---|
活動場所 | 屋内だけか屋外も含むのか、公共施設か民間施設か |
活動時間 | 日中だけか夜間も含むのか、平日だけか休日も含むのか |
移動中の補償 | 集合場所から活動場所への移動中も補償されるか |
準備・片付け | 活動前後の準備や片付けの時間も補償の対象になるか |
スポーツ保険加入前に保険会社にしっかり確認しておきましょう。
活動内容に合っていない補償では、いざというときに役に立ちません。
熱中症や食中毒のリスクへの対応
スポーツ活動では、ケガ以外のリスクもあります。
特に夏場の活動や、食事を伴うスポーツイベントでは、以下の特約の追加を考えてみましょう。
特約 | 必要な団体 |
---|---|
熱中症危険補償特約 | 真夏の屋外活動や激しい運動を行う団体に必要です |
食中毒補償特約 | バーベキューや調理実習などを行う団体に役立ちます |
どちらの特約も、それほど高額な追加掛金なしで加入できることが多いので、活動内容に応じて検討してみてください。
レクリエーション保険の区分と選び方
レクリエーション傷害保険では、スポーツの種類によって危険度が分類されています。
行事の内容に合わせて、適切な区分を選びましょう。
区分 | 対象となるスポーツ活動 |
---|---|
A | バドミントン、卓球、テニス、水泳教室、ヨガなど、比較的安全なスポーツ活動 |
B | 軟式野球、剣道、陸上競技、運動会、サイクリング、マラソンなど、やや危険度の高いスポーツ活動 |
C | サッカー、硬式野球、スキー、ラグビー、空手など、危険度の高いスポーツ活動 |
区分によって保険料は大きく変わってきます。
自分たちの活動内容をよく確認して、適切な区分を選びましょう。
間違った区分で加入すると、事故の際に補償されない可能性もあるので注意が必要です。
このように、スポーツ保険は団体の実情に合わせて選ぶことで、より効果的に活用することができます。
少額の掛金で大きな安心が得られるスポーツ保険を、ぜひ上手に活用してください。
記事のまとめ
スポーツ保険は、部活動やスポーツサークル、少年団など、スポーツを楽しむ団体の強い味方です。
4名以上のアマチュアの団体なら加入できるスポーツ安全保険は、活動中のケガから賠償責任まで幅広く補償してくれます。
また、運動会や大会といった単発のスポーツイベントには、レクリエーション傷害保険という選択肢も。
近年では、インターネットでの加入手続きができる便利なスポーツ保険も以前より増えてきました。
スポーツを安全に楽しむためにも、まだ加入していない団体はぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
また、スポーツ保険は加入しっぱなしではなく、事故が起きた際の具体的な手続き方法を知っておけば、いざという時にも慌てずに対応できます。
スポーツを安全に楽しむためにも、スポーツ保険の上手な使い方を団体内で共有し、しっかり備えておきましょう。