介護施設などで働いている介護・看護職の方にとって、高齢者の方々を喜ばせることは、永遠のテーマになっているのではないでしょうか。
高齢者を喜ばせることは本当に難しいのですが、介護の現場ではレクリエーションが有効な手段になります。
そこでこの記事では、高齢者レクリエーションを行う目的を考えながら、喜んでもらう方法を紹介します。
なぜ高齢者を喜ばせることが難しいのか
レクリエーションは小さな子供に対しても行いますが、こちらは大はしゃぎで参加してくれます。
ではなぜ高齢者向けのレクリエーションでは、つまらなそうにしている人が現れてしまうのでしょうか。
この違いは人生経験の差によって生じます。人生経験の差が、レクリエーション体験の新鮮さに影響してしまうのです。
例えば6歳の子供にレクリエーションを提供するとき、参加者は6年間の人生経験しか持っていないので、ほとんどのレクリエーションは初体験です。
つまり子供には鮮度が高いレクリエーションを提供できるので、子供たちはワクワクしながらそれに臨みます。
しかし80歳の人たちは80年間の経験を積んでいるので、大抵のことは経験済みです。
したがって介護施設で、利用者や入居者たちに「今日はこのようなレクリエーションをします」と説明しても、すぐに「大体こういう感じのことをやるんだな」と見透かされてしまうことがあります。
それで一部の高齢者の方は、レクリエーションに対して鮮度が低いイベントと感じてしまうのです。
そのため介護をする方々は、さまざまな工夫をこらして高齢者にレクリエーションを提供していく必要があります。
高齢者レクリエーションの種類と目的や効果
高齢者にレクリエーションを心から楽しんでもらうには、多種多様のイベントやゲームなどを用意して、いろいろな体験をしてもらうのが良いでしょう。
レクリエーションにバリエーションが加われば、飽きを防止できますし、「このレクは嫌いだが、あのレクは好き」という高齢者にも満足してもらえます。
また、レクリエーションの種類を増やすことで、介護の目的も達成できます。
身体を動かすレクリエーション
施設でも人気の身体を動かすレクリエーションは、身体機能の維持、強化、衰え防止を目的として実施されます。
最も簡単で最もポピュラーな身体レクリエーションは、ラジオ体操でしょう。
ラジオ体操は全身を無理なく、しかししっかり動かすことができます。また、ラジオ体操は音楽にのせて行うので、実はダンスの要素もあります。
ただ、ラジオ体操はあまりに「おなじみ」すぎて、鮮度がありません。
そこで、オリジナルの体操をつくってみてはいかがでしょうか。
演歌や童謡に合わせて身体を動かしていくように設計するのです。
また、最近の高齢者の方々はフォークソングやニューミュージック、ポップ音楽も聴くので、それらの曲に合わせた体操を考案しても良いと思います。
ソフト・ヨガ、ソフト・ピラティスも効果的です。
若い人が行うヨガやピラティスはかなりハードが動きを強いられますが、動きをもっとソフトにすれば高齢者用の身体レクリエーションにすることができます。
頭を活性化させるレクリエーション
頭を使う頭脳系レクリエーションは、体を動かせない高齢者を楽しませる目的で実施されます。
また、脳を刺激して思考能力を維持させる目的にもかなっています。
高学歴の方や、プライドが高い高齢者の方は、遊びの要素があるレクリエーションを嫌う傾向にあります。
そのような方々には、頭を使うレクリエーションが有効でしょう。
脳トレ、パズル、歌当てクイズなど、頭を使うレクリエーションはバリエーションが多い特徴があります。
手先を使うレクリエーション
手指や腕を動かすことは、いつまでも自分で食事をしたいと考えている高齢者にとって重要なアクションです。
そこで、手指や腕のリハビリ効果を期待できる、手先を使うレクリエーションを実施してみてはいかがでしょうか。
折り紙と塗り絵は、準備が容易なため老人ホームや介護施設でもすぐにできるレクリエーションです。
また、将棋や囲碁、オセロやチェスは、頭を使うレクリエーションでありながら、手先を頻繁に使います。
しかも、駒は少しずつ動かしていくので、手先を繊細に動かしていかなければなりません。
そのほか、裁縫や陶芸、工作や音楽に合わせた指体操も手先を使うレクリエーションになります。
そして料理も手先を使い続けるため、レクリエーションメニューに盛り込んでも良いのではないでしょうか。
リラクゼーション
レクリエーションと聞くと真っ先に「動いてもらうこと」を想像するかもしれませんが、「動かない」レクリエーションもあります。
それがリラクゼーションです。
レクリエーションの時間にリラクゼーションを行う目的は、「何もしないことにも意味がある」ということを高齢者に理解してもらうため。
若いころ活動的だった高齢者の場合、介護施設に入居して暇な時間が増えると「今日何もしなかった」と落胆することがあります。
「何もしないこと」を肯定的にとらえられるようになると、そのような気がかりがなくなります。
ソファに横になったり、マッサージチェアを使ったりすることも、リラクゼーションになります。
例えば介護をする方が高齢者に「今日のレクリエーションは『だらだらすること』です」と宣言すれば、高齢者の方は堂々とリラックスできるのです。
そこにさらに、香りのリラクゼーションであるアロマテラピーを導入したり、瞑想の時間を用意したりすることで、より大きなリラックス効果を見込めます。
若干のコストがかかりますが、オイルマッサージも高いリラックス効果が得られます。
レクリエーションを楽しんでもらうポイント
介護施設や介護をする方がレクリエーションを考えるときの注意点を解説します。
また、楽しんでもらうためのコツも紹介します。
楽しさと安全のバランスに注意
運動系のレクリエーションは、楽しさを追求すると安全性が犠牲になります。
それは、危険になるほど興奮できるからです。
しかし高齢者向けの運動系レクリエーションでは、そのような危険をおかすことはできません。
しかし、だからといって腕や足を単純に動かすだけでは、つまらなく感じてしまい楽しくないこともあるでしょう。
楽しさと安全のバランスは、高齢者1人ひとりに合った動きを提案することで実現できます。
例えばラジオ体操でも、ジャンプするパートでは、ジャンプできない方に「ここはジャンプしないでいんですよ」とアドバイスしますよね。
このように、レクリエーションに参加する高齢者がどれくらい動けるのかを確認して、その方にマッチした動きを提案する必要があるでしょう。
企画とコンセプト
高齢者がレクリエーションに「つまらない」と感じるのは、その方の個性もありますが、企画がつまらないことにも原因があるのかもしれません。
高齢者がどのような遊びを望んでいるのか、有り余る時間をどのように使いたいのか、といったことをしっかりリサーチして、そのニーズに応える企画を立ててみましょう。
トライ&エラーも重要です。
レクリエーションが終了したら介護職の方々で集まって反省会を開き、よかった点や課題を挙げていきます。
そして改善点を考えて、次のレクリエーションの企画に反映させましょう。
好みのレクリエーションを探る
そして、誰がどのタイプのレクリエーションを好むのか、あるいは苦手にするのかをリサーチすることをおすすめします。
運動系が好きな人・苦手な人、頭脳系が好きな人・苦手な人、といったことがわかれば、運動系レクリエーションを行うグループと、頭脳系レクリエーションを行うグループにわけることができます。
記事まとめ:目的をよく理解して、楽しいレクを企画しよう
介護施設などで行うレクリエーションは、高齢者の数少ない楽しみの1つです。
したがって施設の方々は「高齢者のための楽しみを提供する」という、高度な仕事をすることになります。
「どうやって笑わせようか」「どうすればゲームに熱中してもらえるか」といったことを考えることで、より良いアイデアが浮かんでくると思います。
高齢者のために、そのアイデアを盛り込んだレクリエーションを実施してみたらいかがでしょうか。