イベント・行事を行う際には、参加者がケガをしてしまうリスクだけではなく、見学者や第三者にケガをさせてしまったり、物品に損害を与えてしまったりするリスクにも備える必要があります。
もし第三者にケガをさせたり持ち物を壊してしまった場合、法律上の損害賠償責任を問われ、賠償金を支払わなければいけない可能性があるためです。
こういったリスクに備えるには、レクリエーション保険だけでは十分ではありません。レクリエーション保険は参加者がケガをするリスクだけに対応しているため、別途損害賠償責任に加入する必要があります。
この記事では、レクリエーション保険の補償内容と、損害賠償責任保険の補償内容について解説。また、損害賠償保険が役立つケースなども具体的に解説します。
イベントや行事を開催する予定の方はぜひチェックしてください。
レクリエーション保険では参加者に対する傷害保険がメイン
レクリエーション保険は、イベントや行事の参加者がケガをし治療が必要になった場合、または万が一死亡・後遺障害が残ってしまった場合に所定の保険金が支払われる傷害保険です。
具体的には、下記の保険金が支払われます。
- 死亡・後遺障害保険金
- 入院保険金
- 通院保険金
- 手術保険金
保険金がいくら支払われるかは、契約時に所定の範囲内で自由に設定することが可能です。
ただし、保険金の額が高額になるほど、レクリエーション保険の保険料も高額になってしまうので、保険料と保険金額のバランスに注意しましょう。
どんなケガがレクリエーション保険の補償対象になる?
レクリエーション保険の補償対象となるケガは、急激かつ偶然に発生したケガです。
つまり、原因となった事故から実際にケガが発生するまでの時間が短く、ケガの原因の発生が偶然である(故意ではない)というケガが対象となります。
例をあげると、下記のようなケガがレクリエーション保険の補償対象になります。
- イベント・行事の最中に、転んで足を捻挫してしまった
- サッカー大会でキーパーをしていたら、ボールがあたって指を骨折してしまった
- ハイキングの最中、石段から落ちて足を骨折し、入院が必要になった
- 遠足で移動している最中、交通事故に遭いケガをした
一方、むちうちや腰痛、靴ずれなどの症状は、急激かつ偶然に発生したケガに該当しないため、レクリエーション保険の補償対象外です。
また、レクリエーション保険の補償対象となるのは、イベント・行事に参加するために所定の集合場所に集まった時から、所定の解散場所で解散するまでに発生したケガです。
この範囲に入らないケガ、たとえば家から集合場所にいくまでに発生したケガなどは、レクリエーション保険の補償対象にならないので注意してください。
※特約を付帯することで、家から目的地、解散場所から家までの往来途上もレクリエーション保険の補償対象にできる場合があります。
イベント・行事の際には損害賠償リスクにも備えた方が良い
ここまで解説してきたとおり、レクリエーション保険はイベント・行事の参加者に対する傷害保険がメインになります。
しかし、団体でイベントや行事を行う際には、参加者のケガ以外にも考えるべきリスクがあります。
それは、参加者や主催者が負う損害賠償のリスクです。
たとえば、イベントや行事の参加者・主催者が通行人にケガをさせてしまったり、所持品に損害を与えてしまった場合には、損害賠償金を請求される可能性があります。
安全にイベントを開催するのであれば、そういったリスクにも備えておくことが重要です。
イベント・行事向けの損害賠償責任保険で得られる補償内容とは
イベントや行事における損害賠償リスクに備えるには、レクリエーション保険の他に、イベント・行事向けの損害賠償責任保険に加入する必要があります。
損害賠償責任保険では、下記のようなケースに備えることが可能です。
- イベント・行事の最中に、主催者の過失で参加者が損害を負った
- イベント・行事の主催者・参加者が、第三者の身体・物品に対して損害を与えた
上記のようなアクシデントが発生し、参加者または主催者が法的な損害賠償責任を追求された際、下記のような保険金が支払われます。
- 法律上の損害賠償金
- 争訟費用
- 損害防止軽減費用
- 緊急措置費用(応急手当や病院への搬送など、緊急措置に使用した費用の補償)
- 協力費用(被保険者が保険会社の要請に応じて協力するために支出した費用の補償)
なお、保険商品によっては、支払われる保険金に免責金額が設定されている場合もあります。
契約時に補償内容を十分に確認しましょう。
損賠賠償責任保険に加入するにはどうすればいい?
イベント・行事向けの損害賠償責任保険に加入する場合には、レクリエーション保険に加入する際にあわせて保険会社や保険代理店に問合せをしてみることがおすすめです。
レクリエーション保険を取り扱っている保険会社の場合、たいていイベント・行事向けの損害賠償責任保険も取り扱っているため、保険商品を案内してくれます。
損害賠償責任保険の保険料見積もりを出してもらう際も、レクリエーション保険に加入する際に必要となる情報(参加者人数や日時、開催するイベントの内容・種類など)があれば問題ないでしょう。
レクリエーション保険によっては、保険案内パンフレット上に損害賠償責任保険についても言及していることがあるため、レクリエーション保険に加入する際にあわせて損害賠償責任保険も検討できます。
しかし、中にはパンフレット上で損害賠償責任保険について全く触れていないレクリエーション保険もあるため、そういった場合にはご自身で損害賠償責任保険について思い出し、加入を検討するようにしてください。
法律上の損害賠償責任を問われるのはどんなケース?
では、行事やイベントの最中の事故で損害賠償責任を問われるのはどういったケースがあるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
主催者が損害賠償責任を問われる場合
主催者が損害賠償責任を問われるケースは、イベントの管理・運営の不備、過失によって第三者に損害を与えてしまったケースが挙げられます。
- イベント会場の受付テントが倒れ、近くにいた子供にあたりケガをさせてしまった
- 主催者が用意したお弁当により、食中毒が発生してしまった
- 運動会で主催者が用意した給茶用のプロパンガスが爆発し、近くにいた参加者にケガをさせてしまった
こういったイベント会場内の設備や物品、用意したお弁当など、主催者が管理しているものが原因で第三者に損害が発生したケースでは、主催者が損害賠償責任を問われる可能性があります。
参加者が損害賠償責任を問われる場合
参加者が損害賠償責任を問われるケースは、イベント・行事の最中に本人の過失によって第三者に損害を与えてしまったケースが挙げられます。
- 野球大会で打ったボールで近隣住民の家の窓ガラスを割ってしまった
- イベントの最中、友人とふざけているうちに相手を押して転倒させてしまった
- イベント・行事で出ていた出店の商品を壊してしまった
このように、イベント・行事が開催されている間に参加者の過失でなんらかの損害が発生した場合には、その損害を起こした参加者本人および管理をしている行事主催者に損害賠償責任が問われる可能性があります。
こういった場合に備えて、やはり損害賠償責任保険に加入してリスク対策をしておくことが重要です
まとめ:レクリエーション保険加入の際は幅広くリスクを考えよう
今回は、レクリエーション保険と損害賠償責任保険で備えられるリスクについて解説してきました。
イベントや行事を行う際には、参加者のケガに対する備えは多くの方が考える一方、第三者に損害を与えてしまうリスクは見逃しがちです。
しかし、第三者への損害賠償リスクは意外と大きく、事故の程度によっては大事になる可能性もあるため、しっかりと備えを用意しておくことが大切です。
レクリエーション保険も損害賠償責任保険も、参加者1人あたり非常に手軽な保険料で加入できるので、イベント・行事を開催する際にはぜひ検討してください。
監修者のコメント
イベントで誤って第三者にケガをさせてしまったり、物を壊してしまった場合、イベント主催者が管理の不備を問われ、法律上の賠償責任が発生する場合があります。この場合の賠償責任金額(弁償金額)は、ケガの程度、物の価値によって決まりますので、高額になることもあり得ます。賠償責任保険への加入も是非検討してみてください。
当記事の監修者:遠山直孝
- 保険コンプライアンス・オフィサー2級
- ファイナンシャルプランナー(AFP)
- 損保大学(法律・税務)※
国立大学卒業後、大手保険会社に27年勤務し、現在は損害保険代理店に所属。営業、企画部門での多彩な経験から、法律・税務を踏まえた実用的な保険の活用に精通しており、日々情報を発信しています。
※損保大学とは、損害保険の募集に関する知識・業務を向上させるために日本損害保険協会が立ち上げた制度。当監修者は「法律・税務」などの知識を深める専門コースを修めています。