趣味や健康維持のためにスポーツをする方が増えていますが、楽しいはずのスポーツも、ケガや事故が発生すれば大きな悩みになってしまいます。
医療費や通院費の負担はもちろん、相手にケガをさせてしまった場合の賠償責任など、経済的なリスクも少なくありません。
そんなリスクに備えるのが「スポーツ保険」です。
この記事では、スポーツ保険とはどんなものかといった基本的な内容から補償内容、加入すべき人の特徴まで、わかりやすく解説します。
スポーツ保険とは運動中の事故やケガに備えるもの
スポーツ保険とは、スポーツや運動中に発生する様々なリスクに備えるための保険商品です。
主にケガや事故による治療費の補償、他人へのケガや物損に対する賠償責任などをカバーします。
一般的な医療保険や傷害保険とは異なり、スポーツ活動に特化した補償内容となっているのが特徴です。
例えば、熱中症の補償や、スポーツ特有のケガ(肉離れ、捻挫、骨折など)に対する補償が充実していることが多いです。
保険が使えるケースと使えないケース
多くのスポーツ保険では「急激かつ偶然な外来の事故」によるケガを補償対象としています。
つまり、突発的に起こった事故によるケガが基本的な補償対象となります。
徐々に発生する障害(使いすぎ症候群)は、基本的に対象外となる点には注意が必要です。
以下はスポーツ保険において保険金が支払われるケースと支払われないケースを紹介しています。
※団体の保険や保険の種類によって対象となるかは異なります
保険金が支払われるケース
- 急性の外傷
・サッカーの試合中に足首を捻挫した
・バスケットボールでジャンプした際に着地で膝を痛めた
・テニスのラリー中に急に方向転換して肉離れを起こした
・野球の練習中に打球が当たって骨折した など - 他者へのケガや物損
・野球の練習中に打球が民家の窓ガラスを割った
・サッカーの試合中に相手選手と接触し、ケガをさせた
・バドミントンのラケットが折れて、第三者にあたった - 活動場所への往復中の事故
・試合会場に向かう途中で転倒しケガをした
・練習から帰宅途中に自転車で転んでケガをした
保険金が支払われないケース
- 慢性的な使いすぎ症候群
・長期間の投球による野球肩・野球肘
・長距離走の繰り返しによるランナーズニー
・徐々に悪化した腰痛や肩こり - 故意または重大な過失
・怒りにまかせて相手を殴ってケガをさせた
・禁止されている危険な行為を行った結果のケガ
・指導者の指示に従わず無理な練習をして生じたケガ
「重複してる?」と悩んだときのチェックポイント
健康保険や生命保険など、すでに何らかの保険に加入している方は、「スポーツ保険に入ると補償が重複するのでは?」と悩むことがあるかもしれません。
以下2つのチェックポイントを確認してみましょう。
①既存の保険の補償範囲
まず確認すべきなのは、すでに加入している保険(傷害保険、医療保険、生命保険の特約など)の補償範囲です。
特に以下の点をチェックすることをおすすめします。
- スポーツ中のケガは対象になっているか
- 通院・入院の日額はいくらか
- 手術給付金はあるか
- 賠償責任保険は含まれているか
- 支払限度額はいくらか
健康保険に加入していれば、捻挫や骨折などの治療にかかる費用を3割負担でカバーしますが、スポーツ保険は自己負担分や通院ごとの定額補償を追加で提供します。
②スポーツ特有のリスクをカバーしているか
一般的な傷害保険や医療保険では、スポーツ特有のリスクが十分にカバーされていない場合があります。
スポーツ保険では、以下のような場合にも対応している点が特長です。
既に加入している保険で対応できない場合は加入を検討することをおすすめします。
- 熱中症の補償
- スポーツ用具の損害
- スポーツ大会や合宿など、特定のイベントのカバー範囲
- 指導者としての賠償責任
- 活動場所への往復中の事故
個人向けと団体向けの2種類がある
スポーツ保険とは、個人向けと団体向けの2種類があり、活動スタイルや人数に応じて選べます。
それぞれの特徴や違いを見ていきましょう。
個人向けスポーツ保険
個人向けスポーツ保険は、個人や少人数でスポーツを楽しむ人に適しています。
たとえば、ランニング、登山、ジムでのトレーニングなど、チームに所属せず活動する人が対象です。
個人向けスポーツ保険の主な特徴
- 加入の手軽さ
・インターネットやコンビニから簡単に申し込める
・団体を形成する必要がない
・最短即日から補償開始のものもある - 柔軟な補償内容
・自分の活動内容や予算に合わせて補償内容を選べる
・複数のスポーツをカバーできる
・特定の危険度の高いスポーツも追加料金でカバー可能な場合が多い
個人向けスポーツ保険は、団体向けに比べて保険料が若干高くなる傾向がありますが、自分のライフスタイルやスポーツの頻度に合わせて柔軟に選べるメリットがあります。
特に複数のスポーツを楽しむ方や、定期的な活動ではなく不定期にスポーツをする方におすすめです。
ただし、保険会社によって補償対象となるスポーツの範囲が異なるため、自分が行うスポーツが対象になっているか確認することが重要です。
特に、スキー・スノーボード、登山、ラフティングなどの危険度が高いとされるスポーツは、標準プランでは対象外となることがあります。
団体のスポーツ保険
団体向けスポーツ保険は、スポーツチーム、サークル、クラブ、学校の部活動などの団体が加入できる保険です。
一般的に4名以上のグループでの加入が条件となることが多いです。
団体向けスポーツ保険の主な特徴
- 掛金を安く抑えられる
・個人で加入するよりも割安
・特に年間を通じて活動する団体に経済的 - 幅広い補償範囲
・団体の管理下にある活動すべてをカバー
・指導者の賠償責任も含まれることが多い
・活動場所への往復中の事故も補償対象になることが多い - 手続きの一元化
・代表者が一括して手続き可能
・事故報告も団体を通じて行うことが可能
・メンバーの追加・変更も簡単
団体向けスポーツ保険は、定期的に活動を行うチームやクラブに特におすすめです。
特にスポーツ安全保険は、アマチュアスポーツ団体向けの保険としては最も人気で、コストパフォーマンスにも優れています。
ただし、団体向け保険は基本的に「団体の管理下にある活動」が補償対象となるため、個人で行う練習やトレーニングは対象外となる点に注意が必要です。
主な補償内容
スポーツ保険の主な補償内容は、「傷害保険」「賠償責任保険」「その他」の3つに分けられます。
それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
①傷害保険:ケガによる通院・入院補償
傷害保険とは、スポーツ中のケガによる治療費や入院・通院に対する補償です。
具体的には以下のような保険金が支払われます。
死亡保険金 | ・保険金額は数百万円~数千万円(保険によって異なる) ・遺族や法定相続人に支払われる |
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後遺障害保険金 | ・ケガが原因で事故発生から180日以内に後遺障害が残った場合 ・障害の程度(1級~14級)に応じて、死亡保険金額の4%~100%が支払われる |
通院保険金 | ・ケガの治療のために通院した場合、日数に応じて支払われる ・日額1,500円~5,000円程度が一般的 ・通院限度日数は保険によって異なる(30日~180日程度) |
入院保険金 | ・ケガの治療のために入院した場合、日数に応じて支払われる ・日額3,000円~10,000円程度が一般的 ・入院限度日数は保険によって異なる(30日~180日程度) |
手術保険金 | ・ケガの治療のために手術を受けた場合に支払われる ・入院中の手術:入院保険金日額の10倍程度 ・外来の手術:入院保険金日額の5倍程度 ・対象となる手術の種類は保険によって異なる |
傷害保険の特徴として、健康保険を使用した際の自己負担分だけでなく、日数に応じた定額給付となる点があります。
つまり、健康保険の3割負担額よりも多くの保険金を受け取れることもあります。
例えば、サッカーの試合中に足首を捻挫して10日間通院した場合、健康保険の自己負担額が合計15,000円だとしても、通院保険金が日額2,000円なら20,000円の保険金を受け取ることができます。
余剰分は交通費や収入減の補填などに充てることができます。
②賠償責任保険:他人をケガさせた場合の補償
賠償責任保険とは、スポーツ活動中に他人にケガをさせたり、他人の物を壊したりした場合の法律上の損害賠償責任を補償するものです。
対人賠償 | ・スポーツ中に相手選手にぶつかってケガをさせた ・野球のボールが観客に当たってケガをさせた ・指導中に参加者がケガをした場合の指導者の責任 ・イベント参加者が熱中症になった場合の主催者の責任 |
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対物賠償 | ・野球の打球が駐車場の車のフロントガラスを割った ・サッカーのボールが近くの民家の窓ガラスを割った ・借りたスポーツ施設の設備を誤って破損した ・合宿所の備品を壊した |
スポーツ活動では予期せぬ事故が起こり得るため、賠償責任保険の加入は特に重要です。
特に、野球やゴルフのように、ボールが飛び出す可能性のあるスポーツや、接触プレーの多いスポーツでは、賠償リスクが高まります。
賠償責任保険の補償限度額は、対人・対物合わせて1億円~5億円程度が一般的です。
免責金額(自己負担額)がない保険が多いですが、保険によっては数千円~数万円の免責金額が設定されている場合もあります。
③その他
スポーツ保険には、傷害保険と賠償責任保険以外にも、様々な特約や追加補償があります。具体的には以下のようなものがあります。
- 突然死葬祭費用保険
- 用具損害補償
- 救援者費用補償
- イベント中止補償
例えば、登山を趣味とする方なら救援者費用が補償される保険、水泳を指導する方なら指導者特約がある保険といったように、活動内容に合わせて選ぶことで、より安心してスポーツを楽しむことができます。
スポーツ保険に加入すべき人とは?必要性について
スポーツ保険は、万が一のケガや事故に備える「安心料」と考えることができます。
結論、スポーツをする人はどんな人でも加入すべきだと言えます。
スキーやスノーボードでの前十字靭帯損傷は、手術やリハビリを含めると数十万円の費用がかかることがあります。
また、ゴルフでの他人への賠償事故では、数百万円から数千万円の賠償責任が生じるケースもあります。
高額な治療が必要になるケガや、他者への賠償責任が発生するリスクがある場合は、保険加入を検討する価値があるでしょう。
保険料は年間数百円~数千円程度と比較的安価なことが多いため、リスクと保険料のバランスを考えると、何かしらのスポーツをする人であれば、加入するメリットは大きいと言えるでしょう。
記事のまとめ:次の記事ではおすすめの団体保険を紹介
本記事では、スポーツ保険とはどんなものかといった基本的な内容から補償内容、加入すべき人の特徴について解説しました。
次の記事では、団体向けのおすすめスポーツ保険を詳しく紹介するので、チーム活動を始める方はぜひ参考にしてください。
スポーツ保険を活用し、安全で楽しいスポーツライフを送りましょう!