お子さんが学校の体育や部活動でケガをしてしまったとき、どのような保険が適用されるか知っていますか?
実は、学校管理下で起きた事故やケガには、日本スポーツ振興センターの「災害共済金給付制度」が適用される場合が多いのです。
この記事では、学校でのスポーツ・体育中に起きた事故やケガに適用される保険制度について、分かりやすく解説します。
学校でのケガは「災害共済金給付制度」が適用される
学校のスポーツ活動や体育等で発生したケガには、日本スポーツ振興センターの「災害共済給付制度」が適用されることが多いです。
学校の設置者(自治体や学校法人など)が保護者と負担して掛金を支払う互助共済制度です。
多くの公立学校ではほぼ100%加入しており、私立学校でも高い加入率を誇ります。
どんな時に適用される?
災害共済給付制度は、以下のような「学校管理下」での事故やケガに適用されます。
- 授業中のケガ(体育や実験、実習など)
- 休み時間や放課後のケガ
- 部活動でのケガ
- 遠足や修学旅行などの学校行事中のケガ
- 登下校中のケガ(通常の通学路・方法による場合)
- 学校管理下で発症した熱中症
- 給食による食中毒
ここで重要なのは「学校管理下」という概念です。
これは学校の教育計画に基づいた活動中、または学校の管理・監督下にある状態を指します。
たとえば、無断で校外に出たときのケガや、顧問の許可なく自主的に行った活動中のケガは対象外となる場合があります。
補償範囲については、公式ホームページのよくある質問でも紹介しているので参考にしてください。
給付金額はどれくらい?
以下は、日本スポーツ振興センターが運営する災害共済給付制度の給付金額表です。
災害の種類 | 災害の範囲 | 給付金額 |
---|---|---|
負傷 | その原因である事由が学校の管理下で生じたもので、療養に要する費用の額が5,000円以上のもの | 医療費 |
疾病 | その原因である事由が学校の管理下で生じたもので、療養に要する費用の額が5,000円以上のもののうち、文部科学省令で定めているもの | |
障害 | 学校の管理下の負傷及び上欄の疾病が治った後に残った障害 | 障害⾒舞⾦88万円〜4,000 万円 |
死亡 | 学校の管理下において発生した事件に起因する死亡及び上欄の疾病に直接起因する死亡 | 死亡⾒舞⾦3,000 万円 |
運動などの⾏為に起因する突然死 | ||
運動などの⾏為と関連のない突然死 | 死亡⾒舞⾦ 1,500 万円 |
参照:給付金額 | JAPAN SPORT COUNCIL 日本スポーツ振興センター
https://www.jpnsport.go.jp/anzen/saigai/seido/tabid/85/Default.aspx
給付金の申請方法や手続きについて
給付金の請求手続きは、学校設置者がセンター(各地域の給付担当窓口)に対して行い、その後、給付金はセンターから設置者を通じて児童生徒などの保護者へ支払われます。
なお、保護者自身が給付を求める際も、学校設置者を経由して請求することが可能です。
災害共済給付の請求フロー
- 災害発生
・対象:児童生徒等
・内容:負傷・疾病など - 医療機関での診療
・医療費の証明を作成 - 学校への提出(保護者)
・保護者が学校に「医療の状況」等を提出 - 学校による処理
・「災害発生状況」や「医療の状況」データを作成・入力 - JSC(日本スポーツ振興センター)に提出
・書類と請求データを提出
・JSCが審査・決定 - JSCから設置者へ通知・送金
・給付金支給額を決定し、設置者に送金 - 設置者から保護者へ給付
・給付金が保護者に支払われる
【注意】地域クラブ活動中の事故は災害共済給付の対象外
学校の部活動とは異なり、地域のスポーツクラブや民間のスポーツ教室などでの活動中のケガは、災害共済給付制度の対象外となります。
例えば、以下のようなケースは災害共済給付の対象外です。
- 地域の少年サッカークラブでの活動中のケガ
- 民間のスイミングスクールでのケガ
- 学校施設を使用していても、学校の管理下にない活動中のケガ
これらは「学校の管理下」ではないため、ケガや事故に備えたい場合は別途保険に加入する必要があります。
そのため、このような活動に参加させる場合は、団体が加入している保険内容を事前に確認するか、個別に保険に加入することをおすすめします。
クラブ活動などは団体スポーツ保険に入るのがおすすめ
学校の部活動以外でスポーツをする場合や、より手厚い補償を希望する場合は、団体スポーツ保険への加入を検討しましょう。
団体スポーツ保険には、ケガの治療費だけでなく、入院・通院の日額補償や賠償責任補償などが含まれているものが多くあります。
団体スポーツ保険のメリットは以下の通りです。
入院・通院の日額補償 | 入院や通院1日あたりの定額給付が受けられます |
---|---|
賠償責任補償 | 他人にケガをさせたり、物を壊したりした場合の補償があります |
手術給付金 | 手術を受けた場合に給付金が出ることがあります |
最もおすすめなのは「スポーツ安全保険」
地域のスポーツクラブや少年団などで最も広く利用されているのが、「スポーツ安全保険」です。
スポーツ安全保険は、公益財団法人スポーツ安全協会が運営する団体向けの保険制度です。
スポーツ活動だけでなく、文化活動や地域活動を行う4名以上の団体であれば加入することが可能です。
スポーツ安全保険の特長
スポーツ安全保険が多くの団体から選ばれている理由は主に以下の4つです。
手頃な掛金 | 年間数百円~2,000円程度と経済的な負担が少ない |
---|---|
幅広い補償内容 | ケガの治療費だけでなく、賠償責任も補償 |
簡単な手続き | 団体ごとに一括加入が可能で手続きが簡単 |
活動場所への往復中も補償 | 自宅から活動場所への行き帰りも対象 |
小学生の野球チームから高齢者のウォーキングサークルまで、幅広い年齢層と活動種目に対応しており、全国で約750万人が加入しています。
スポーツ安全保険の加入区分と年間掛金
スポーツ安全保険は年齢や活動内容によって、加入区分と掛金が異なります。
主な加入区分は以下の通りです。
加入区分 | 対象者 | 年間掛金(1人あたり) |
---|---|---|
A1区分 | 中学生以下 | 800円 |
A2区分 | 高校生以上(文化活動など) | 800円 |
B区分 | 65歳以上(スポーツ活動) | 1,200円 |
C区分 | 高校生以上~64歳以下(スポーツ活動) | 1,850円 |
D区分 | 全年齢(危険度の高い活動) | 11,000円 |
D区分は、スキー、スノーボード、アメリカンフットボール、山岳登はんなど、危険度の高いスポーツを行う場合に適用されます。
ご自分の活動がどの区分に該当するかは、保険加入の前に、スポーツ安全協会に問い合わせることをおすすめします。
スポーツ安全保険の補償内容
スポーツ安全保険では、「傷害保険」「賠償責任保険」「突然死葬祭費用保険」の3つの補償を完備しています。
高校生以下の学生に適用される主な補償内容は以下の通りとなります。
死亡保険金 | 3,000万円 |
---|---|
後遺障害保険金 | 最高4,500万円 |
入院保険金 | 日額4,000円(180日限度) |
通院保険金 | 日額1,500円(30日限度) |
賠償責任保険 | 5億円(対人賠償は1人1億円) |
記事のまとめ
お子さんが学校でスポーツや体育中にケガをした場合、基本的には「災害共済給付制度」が適用されます。
この制度は医療費の一部を補償するものですが、給付金額には限りがあります。
一方、地域のスポーツクラブなどでの活動中のケガは災害共済給付の対象外となるため、「スポーツ安全保険」などの団体保険に加入することが重要です。
お子さんがスポーツをする際は、どのような保険が適用されるのかをあらかじめ確認し、万が一のケガに備えておきましょう。
ケガをした場合は、速やかに学校や団体に報告し、適切な医療機関を受診することが大切です。